腹黒行動開始







「っ、三村、隊長……?三村隊長!!」

「落ち着いて槇っちゃん…!片倉隊長との通信は?!」

「ま、真由ちゃん……。大丈夫。こっちはまだ繋がってる」

予期せぬ事態に動転した鈴希は掛けられた真由の声に、落ち着きを取り戻し綾瀬との通信状況を確かめた。

「片倉隊長、今の爆発で恐らくセキュリティは無力化していると予測されます。ところで三村隊長の好みのタイプってどんなで「Σちょっちょっ待って真由ちゃん!それ関係ない、てか君こそ落ち着いて!」はっ!やだ、私ったら何を!」

鈴希に代わり冷静に綾瀬へと状況を告げた。
と、思いきやさらりとずれた質問を始めた真由に鈴希はワンテンポ遅れつつも制止の声を上げる。
どうやら真由も動揺していたようだ。

『セキュリティはどうでもいいけど和人は…ってんん?タイプ?まつりちゃんはピクルスが大好きだったよ』

対する綾瀬の返答は和人の安否を気に掛けてはいるものの、訝しむでもなくいたって普通だ。
しかしタイプという意味では何か論点がずれている。

「ああもう片倉隊長も真面目に答えないでくださいてかどんなのがタイプだか全くわかんないです。それ」

そんな綾瀬に間髪入れず言葉を返しながら、鈴希は自身のツッコミ気質を認識せざるをえなくなった。

「とにかく、三村隊長も気になりますが今優先すべきは矢野です。迷ったらこちらでナビゲートを致しますので至急矢野の捜索及び確保に向かって下さい」

「ふむ。ピクルス好き。…ってあ、確保が困難なようでしたらぶっ殺しちゃってくださーい!」

『はいはーい。あ、和人と連絡とれたら教えてね』

このままでは埒があかないと現状を打破すべく鈴希は指示を促し、直ぐ様真由の覇気覇気とした声が続く。
それを合図に軽く返事を返し綾瀬は行動に移った。


「…、…可哀想だね、矢野。綾瀬隊長が相手なんて」

「虐めるの好きだからねー。でもまあ、自業自得よ。なるべくすんなり済んだらいいな。とは思うけど」

綾瀬との連絡もとれ一段落した真由と鈴希はこれから矢野に起こるやも知れない悲劇に互いの想いをぽつりとこぼした。
綾瀬は事実上の刑務官部隊のNO.2でありかなりの強さを誇っている。
また、すこぶる付きの虐殺好きでも知られていた。
抵抗を示した標的を長時間に渡りじわじわといたぶり殺すその殺り方は様々なタイプの遺体を見てきた遺体回収班ですら気分が悪い、と回収を辞退する者が出てくる程だという。
最も、相方であり上司でもある和人が任務に時間を掛けることを良しとしない為、滅多に凶行に移ることはないのだが。
今回はそのストッパーが不在、基、生死不明の状態である。
返答次第で矢野が悲惨な末路を辿る可能性は十分に高い。

「真由ちゃん、単に早く三村隊長の安否を確認したいだけだよね」

「うんっ」

更に、和人が被害を被ったと言うのに珍しく鋭さのない真由の発言に、その真意を指す言葉を投げ掛けた鈴希は再び返った明るい声にちょぴりと切なさを感じてみた。
ライバルが刑務官最強だなんて勝てる気がしない。

2006.11.10




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