まるさんかくストロベリー | ナノ






卒業間近のある日、部活の後輩達がひらいてくれた追い出しパーティーにて行われたビンゴで、幸運の一等賞を手に入れたのは、私だった。「おめでとうございます!」「はい、こちら一位の商品です」カランカランとベルを鳴らして小さな封筒を渡してくる後輩達。2等も3等も、質量のあるお菓子やバスグッズだったから、一等景品のコンパクト感に驚き、不思議に思った。


「これ、金券とか?」


そばにいた一人にそう聞くと、彼女は首を横に振る。「ウチに帰ってから開けてみてください」そういわれ、ネタバラシを催促する仲間たちの声を振り切りようやく帰ってきて封筒を開けたのが今。中に入っていたのは、誰のものかわからぬ電話番号だった。これが、一等?驚きながらも携帯を出し、かけてみる。スリーコール目くらいでようやく呼び出し音は途切れ、「もしもし」知らない、男の人の声がした。


「よーやくかかってきた。お前が例のラッキーガール?」


スマホ片手に固まる私とは違い、電話に出た相手は事の全てを理解しているかのように話しかけてきた。「あの、誰…ですか?」恐る恐る聞いてみると、相手は少し笑ってそして、「知りたい?」ともったいぶってくる。もしかして間違い電話?なんて考えがよぎった後、彼は明るい声で言った。


「明日、昼までは学校だから…そうだな、15時に××駅広場で会おうぜ」


そう言って彼は電話を切った。聴き覚えのない声だけど、この人は私の知り合いなのだろうか?シンプルに答えが知りたい好奇心と、後輩が用意してくれた一等がどれだけのものか受け取りたいという気持ちが私の脚を動かし、ついに私は約束の日時に待ち合わせ場所まで出向いてしまった。
  

* * *


休日の駅付近は沢山の人で賑わっていた。指定された広場はデートの待ち合わせ場所の定番で、目に見える全てのベンチにカップルが座っているのが確認できた。今日の相手が学校帰りだと言うので、私も合わせて制服を着てきたのだけれど、辺りにはそれらしい人が見つからない。ポケットからスマホを取り出し、昨日の番号に電話をかけたその時だった。トントン、と肩を叩かれ、振り向くとそこには、私より少しだけ背の高い赤髪の男の子が立っていた。


「今、電話かけてる相手って俺?」


そう言って彼は私の電話番号の映るスマホを顔の高さまで持ち上げる。私は、驚いてスマホをゆっくりと耳から外し、彼のことを見つめ直した。チェリーのような真っ赤な髪と、ビー玉みたいな大きな目。極め付けはすぐ近くの『立海大附属中』の制服。
間違いない、彼は、毎朝電車で出会うアイドルみたいに可愛い顔した男の子だった。


「どーも、一応俺が一等景品。あんたの後輩に頼まれたから、一日だけ連れ回してくれって言われてんだけど…それで本当に大丈夫?」


風船ガムを噛みながら、首を傾げて聞く姿が最高にキュートな彼は、どうやら後輩に頼まれて来てくれたスペシャルゲストらしい。間近で見たら、彼は本物のアイドルより可愛らしい顔をしているかもしれない。「俺、丸井ブン太。お前は?」丸井、くん。そういう名前だったのかと知り、じんわり胸が温かくなった。「わ、私は…」まさか一方的に認知しているイケメンが来るなんて思っても見なかったから、緊張で上擦る声で辛うじて名乗れば、丸井くんはわずかに耳を寄せて聴き取ろうとしてくれた。名乗り終えてから急に自分の身なりが心配になり、明るさを落としたスマホの画面で前髪の位置を整えたら、丸井くんが横からその様子を覗き込んできた。


「大丈夫、可愛いって」


シチュエーションにあった120点の解答に手が震えた。最近噂に聞くビジネス、レンタル彼氏って、こんな感じなのかなぁなんて、チカチカ眩しい視界の隅でそんな事を思った。



ストロベリーシェイク






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