姫川を家まで送ってから、当たり前のように俺とシゲは二人になった。赤く染まる住宅街をずっと歩いていく。さっきまでずっと喋ってたのが嘘のように、俺達の間には沈黙が流れていた。それが痛く感じて、俺は思い切ってシゲに問い掛けた。


「なあ、シゲ」
「何やー」
「お前姫川の事どう思ってる?」


俺のその言葉に、案の定シゲは驚いた素振りを見せる。そしていつものおどけたような顔で俺の顔を覗き込んだ。


「急にどないしてん」
「いいから早く答えろよ」


いつになく真剣な空気を感じたのか、ふざけた表情が真面目なものへと変わる。少し考え込むように目を伏せる。その姿から答えはわかったようなものだった。


「親友、以上」
「……それは"好き"と捉えてもいいって事なのか?」
「どうやろな」


そしてまた、肝心なところではぐらかす。昔からそれが上手い奴だった。いつだって、一番大事なところは教えてくれない。そのくせして、


「そう言うたつぼんは?」


人の事にはかなり聡い。こうしている今も、俺を見るその瞳は確信の光に満ちていた。もう隠すのすら面倒臭いと思ってしまう。


「好きだよ。中学の時から、今までずっとな」
「……さよか」


それだけ言って、伏せていた顔を上げて真っ直ぐ空を仰ぐ。夕日に照らされて輝く金髪の間から覗く表情は、何故か笑っていて。俺はその笑顔の理由がわからなくて、あえてもう何も言わなかった。




トライアングラー

(君はまだ気付いていない)