「お前が弟子を取ったら」
「…ん」
「天祥と勝負させる」
「いいね、ソレ」
胸が弾んだ。どこかわくわくする。私の未来の弟子と、ナタクが世話をする天祥くんが、戦うなんて。早く弟子を取りたい、とも思ってしまうではないか。
「太乙真人にもよろしくー」
背中で手を振りながら、私は帰路につく。
「また来るよ」
「…ああ」
彼もまた、私の背中に、別れを告げる。
時間感覚の薄い仙人だ、また来る、だなんて言って、随分経ったと思って来ても、さほど時間が経っていないうちに私はナタクを訪ねるのだろう。唯一無二の、愛しい友人。激しい戦いの中で、唯一亡くさずにいられた、大切な人。
風がまた吹き抜け、私の頬をなでた。明日は楊ゼン教主に言って、下界にスカウトしに行かせてもらう。きっといい人材がいるに違いない。そしたら私の家に引き取って、ナタクにも紹介しよう。天祥くんにも。
退屈な日々も、すこし彩りを持つに違いない。
(20110131)
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