「……」
「……」
また、風が駆け抜ける。ナタクの髪も、私の髪も、揺れた。夕日のように真っ赤で美しい髪。戦いの為に生まれてきたような容姿をしている。
「なまえは。どうするんだ」
「え?」
「家を建てたんだろう。一人で住むのか」
だれかと住まないのか。と言ったナタクを、私は失礼ながら疑った。だれかと戯れることを好まない、この戦いの申し子が、そんなことを言うなんて。
「……そーね」
私は立ち上がり、腕をのばし空に突き上げる。んんーっ、と唸ったりして、背筋を伸ばした。
「まー、弟子かなんか取るとしますかねー」
「……フン」
「ナタクは?仙人の免許取ればいいじゃん」
「……興味がない」
「……あっそう」
ふわ、とナタクも浮いて、私の目の前に降りる。彼はすこし背が伸びたのかもしれない。私を見下ろすその澄んだ瞳。美しい、と思った。
「なまえ」
「ん?」
ナタクは目線をそらし、その、と言った。ごにょごにょと口元が微妙な音を発している。やっと口にした言葉は、少し意外な言葉だった。
「……また修行に付き合え」
「…ばかねー、私があんたにかなう訳ないのに」
「構わん。」
「はいはい」
私は口元が緩むのを覚えた。やっぱり、ナタクは私のことを嫌っていないでくれているらしい。スーパー宝貝を使う彼と、一介の仙人である私が、対等にやりあえる訳などないというのに、構わないと言ってくれる。私はそれだけで十分だと思った。
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