あれから、少しの月日が過ぎて。私たち仙人と、妖怪仙人たちの折り合いもようやくついて、日々が穏やかに過ぎ去ろうとしていた。私は蓬莱島に一つの居住区を得、小さな家を建てた。誰と、という訳でもなく、一人でそこに住んでいる。広い蓬莱島の中での一人暮らしとはいえ、たまに蝉玉ちゃんや、スープーちゃんや、いろんな人が遊びにきてくれるから寂しくはない。
「やあ!」
「……」
時折、私はナタクにも会いに行く。引きこもりで、無愛想で、コミニュケーションスキル皆無の奴のところへ。彼もまた居住区を得、というか太乙真人様と一緒に住んでいるんだけども、とにかく平穏に暮らしている。
小高い丘の、麓に美しい蓮の園を携えた丘が、ナタクと太乙真人様の居住区だった。私の家から少し時間がかかる場所に、彼らは住んでいた。
といってもそこにあるのはハンモックとか石造りのテーブルとイスと、ベンチだけ。彼らが寝泊まりするのはその下の地下室だったし、太乙様のラボもその中にある。
ナタクは、ハンモックに横になっていた。
「やー今日も良い天気ですねえ」
「……何しに来た」
「別に。深い意味は無いよ」
私は、イスをずるずると引きずって、ハンモックの近くに腰をかけた。青い空を向こうに、ナタクはまだハンモックに寝転がったまま。木陰がゆれて、ナタクの頬の上を揺れる。
ざあ、と風が駆け抜けた。私の髪がぶわ、と広がり、視界が少し狭くなった。
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