「わーいい天気ー」


びゅう、と風がすこし強かったけれど、日差しも良好で屋上から眺める町はとても綺麗だったし、何より空がとても澄んですがすがしかった。


「やっぱりこの時期の晴れた日は屋上デスヨネ!私ってばセンスいい!」
「…そうだな」


…だというのに。


「何その反応。」
「…別に」


宝生綾芽は友達が少なさそうで休み時間とか昼休みとか暇そうにしているから、わざわざ私は屋上に奴を連れてきてやったというのに。
当の宝生綾芽は反応が薄かった。別に、とか沢尻か。(ネタが古いか。)
わざわざ連れてきてやったというのに。重要だから二回言うがわざわざ連れてきてやったというのに。


「この私がわざわざ誘ったのに、その反応はないでしょ」
「…悪かったな」
「わりーよ。もうちょっと感謝しろ。讃えろ。」
「…」


いつになく腹が立つ。いつも私にちょっかいばかり出してはフン、なんて偉そうに笑うのに、なんだこいつのそっけない反応。


「こんなにお空は青くて綺麗なのに。あんたに見せてやろうと連れてきてやったのに」
「…」


座って、二人して空を仰ぐが。
宝生綾芽は黙ってばっかりだった。
びゅう、とまた風が吹いて、私の髪をぐちゃぐちゃにした。


「なんか言ったらどうなんだよ」
「…オレには、くすんだ蒼に見えるよ」


ハァ?と思ったが、なんだか奴の雰囲気がいつもと違う気がする。悲しい横顔をしている。それを見て、大人しくしていれば美人なのに、とか、思ったより睫長いな、なんて考えた。そしてそんなことを思いながら、いつもならここで何まじまじと見てんだ気色悪い、などと罵られるはずなのに、また違和感を感じた。

ろごす、というやつかな。前に珠美ちゃんが言っていたけれど、のろいとかそういうやつらしい。それで、それは珠美ちゃんにしか解放できないらしい。


「あんたと見ている世界とは違うんだろうな」


なんで、そんな悲しいことを、そんな悲しい声で言うんだ。
もしかしたら私の隣にいるこの男は宝生綾芽なんかじゃないのかもしれない。宝生綾芽は高飛車でいつも人を見下して人を足蹴にするようなひどい男のはずだ。


「あんたと同じ空が見れなくて残念だ」


ふわ、と今にも泣きそうな顔で、なのに宝生綾芽は綺麗に笑っていた。こいつの笑顔はこんなに儚いものだったっけ。むしろ私が見てきたのは、今までの宝生綾芽が偽者だったのかもしれない。
きっとショッカーとか仮面ライダーとかそういうのの仲間だったのかもしれない。

でも、目の前にいるのはやっぱり宝生綾芽だったし、私が見てきたのも宝生綾芽だ。
ここにいる宝生綾芽は、今にも消えてしまいそうなくらい儚くて
気がついたら、奴のワイシャツを握っていた。


「わ、ごめん」
「…気にするな」
「伸びちゃった…ごめん」
「…じゃあ、」
「…?」
「お詫びに、午後はここでサボり」
「…、」


いつか消えてしまうのなら、
こいつとのこの時間を大切にしたい、と思った。
















そうして二人を探しにきた桔梗ちゃんに怒られればいい。

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