「もうちょっと」
「…ファイ……」
「こうしていたい」
ユゥイが幼稚園にあがるんで、オレは今まで以上に働かなくてはならなかった。元々要領がよかったのか、早い時期に管理職にはつけたものの、その分仕事は今までより増えた。こうやって有給を取るのも一苦労だ。
だから、少しでもなまえとの時間を、大切にしたいと思った。
「最近、時間なかったものね」
「…うんー」
「ファイの腕の中、暖かい」
なまえはオレの背にそっと手を回した。背中に感じる、かすかなぬくもり。愛しいなまえの腕。
二階ではバタバタとモノの転がる音も聞こえた。水着をなかなか見つけられないでいるのだろう。
「そろそろユゥイ降りてきちゃうよ」
「うんー」
「もう、ファイ。ファイはユゥイと同じくらい、甘えただね」
「なまえはオレのもの。ユゥイのママだけど、それ以上に、オレの大好きな奥さんなんだから」
「うん…嬉しい」
抱きしめた腕を緩めた。同じタイミングで、階段を駆け下りる足音を聞いた。
「二人目は、女の子にしようねー」
「女の子だったら、ファイ、溺愛しそう」
「世界で一番可愛いのがなまえで、二番目が娘って、自慢する」
「あはは、想像できる」
ドアがかちゃん、と開いて、ユゥイがオレとなまえの間に飛び込んだ。
「水着あったー!」
「じゃあ、プールはじめようか」
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