花宵クリスマス2009

「メリ〜クリスマース!」


ぱん、と明るい音と共に飛び出す、いろんな色のテープたち。目の前に並ぶのは、七面鳥やケーキやローストビーフや、さまざまな手の込んだ、豪華な料理たち!

宝生家のクリスマスパーティー(といっても、手作りなんだけど)に御呼ばれされました!


「とも、クリームついてる」
「え、ほんと?取って取って」
「先生。シャンパンはいかがですか?」
「あ、いいんですか?じゃあお言葉に甘えて…」
「貴女のために選んだんですよ。気に入っていただけたら幸いです。」
「わあ、甘いー!おいしいです桔梗先生!」
「せんせ、プレゼント用意したよな?」
「あ、はい。もちろんです!」


ともゑくんと菫くんは羽も背負って、天使のような格好に身を包んで、笑顔でニコニコ楽しそうにご馳走を食べている。綾芽くんは、クールな普段の彼からは想像できないけれど、サンタさんの赤い帽子をかぶって、お皿片手にいろいろ物色している。そのお皿にはローストチキンやベーコンやお肉類がいっぱい乗っていて、やっぱり綾芽君も食べ盛りなんだなあ、と思う。
桔梗先生と葵理事はいつものスーツに身を包んで、シャンパンを飲みながらパーティーを楽しんでいるようだ。

年に一度のクリスマスを、みんなと過ごせるなんて、夢みたい!


「で、先生はプレゼントは何を選んでくれたんですか」


綾芽くんと葵理事は、プレゼント交換用の品の内容が気になっているご様子。
うーん、そんなに重要なことかなあ?


「今言っちゃったら面白くないでしょ?後からのお楽しみね」
「僕はね、トイカメラ!」
「お前のは聞いていない」
「うわうぜー」
「トイカメラ?センスいいね」
「わーい先生に褒められちゃった!」
「うぜえ」
「ふーんだ!」

「メリークリスマス、先生」
「きゃあ!」


突然、耳元で声がした。びっくりして振り向けば、そこには楽しそうに笑う紫陽さんがいた。


「あはは、驚いた先生も可愛い」
「兄貴ッ…!いつのまに!」
「オレの部屋に勝手に入ってくるとはいい度胸だな」
「改めて、メリークリスマス、先生」
「無視すんじゃねーよ!」


そう言って紫陽さんは、私にひとつの箱を差し出した。緑色の包装紙にはサンタさんとトナカイのイラストがちりばめられていて、赤いリボンには金糸でメリークリスマス、と書かれている。


「え、くださるんですか?」
「君のために選んだんだ」
「わ、わわ!ううう嬉しいですありがとうございます……!」

「ちょっとパパ、抜け駆け禁止」
「ずるいぞっパパ!」

「あはは。心配しないで、ともゑと菫の分も用意してあるよ」
「そういう意味じゃ…」「本当!?」「って、とも…」


目を輝かせて、中身は!?なんて尋ねるともゑくんは、やっぱりまだまだ子供のようだ。微笑ましくて私は思わず笑みがこぼしてしまう。


「今日も一段と可愛らしいですね、先生」
「ありがとうございます」
「夜は長いですから、ゆっくりしてくださいね」
「はい!」
「是非泊まる時はわたしのベッドで」
「…え?」
「きっと夜は冷えますから、わたしが暖めてさしあげますから」
「き、きき桔梗先生!?酔ってます?」
「『寄っていきます?』ああ、貴女の部屋に泊めていただけるのですか?」
「違ッ!」
「ふふ、先生も大胆なんですね」
「葵理事ー!助けてくださいもう駄目ですこの人早くなんとかしないと!」

「あーもう桔梗ちゃん。だから徹夜は止めろって言ったのに」
「なんですか葵さん、わたしと先生の時間を邪魔しないでください」
「わかった邪魔しないからとりあえず水飲め」


しらふそうな様子で酔っ払うなんて桔梗先生らしいといえばらしいけど…一番厄介な酔い方だなあ…
葵理事に連れられて、ソファに案内された桔梗先生は、お水を飲んだ後すこし横になることにしたらしい。すやすやと眠る桔梗先生は、とても整った顔立ちをしていて、本当にお人形さんのようだった。
私はソファの前にかがんで、桔梗先生の寝顔をじっと見つめてしまった。
酔ってなかったら、本当に素敵なのに。
冬休み中も忙しいんだろうなあ、桔梗先生は。


「無理してたんだよ、桔梗は」
「…え?」


シャンパングラスを片手に、紫陽さんがソファの背もたれ越しに、私に話しかけた。


「君に最高のクリスマスパーティーを用意するために、今日の仕事は昨日中に全部終わらせて、今日は朝から準備してたんだって。」
「そう、だったんですか、」
「先日僕に電話してきてね。楽しそうに、先生を招待する、って言ってた。」
「…桔梗、先生」
「残念なことに寝ちゃったけどね」
「…ありがとうございます、紫陽さん。わざわざそんなこと教えていただいて…教えていただけなかったら、きっと私、何も知らないまま今日家に帰るところでした」
「どういたしまして」


ニコ、と微笑んで、紫陽さんは、また別のところへふらふら、と行ってしまった。


「桔梗、先生」


美しい肌、長いまつげ、金色の柔らかな髪。
閉じられたまぶたのむこうには、澄んだ紫色の瞳が潜んでいる。

プレゼント交換も、あるけれど
物よりももっと素敵なものを、プレゼントされた私はなんて幸せなんだろう、と思った。
桔梗先生にそこまで思われているなんて。教師としてまだまだ半人前で、ミスもするし、生徒の面倒も見切れないのに、そんな私に桔梗先生は厳しくも優しく、そしてこんなに親切にしてくれている。
申し訳なさと、それの何倍もの感動で胸が詰まりそうだ。


「本当に、最高のクリスマスです」


すやすやと眠る貴方は、きっと楽しい夢を見ているのでしょうね。





メリークリスマス!









20091215-20100531
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