sleep in one's class






 黙っていれば良い男、中を開けたら最低な男。
 そんなことを誰もが一度は思う国語教師、葛城 銀児。
聖帝学園には色々と暗黙や疑問が渦巻いているが、彼もそこに入っている。
 真っ赤にストライプの入った、何処か夜の兄ちゃんを彷彿させる国語教師が何処にいようか。
否、いるから困っているのだ。
グローブも誰かとケンカするためですか、とすら聞きたくなる。
お洒落なんて単語聞きません。
 それほどっ疑わしいのだ。
 なのに、古典であっさりと詩を詠ってくれたりする。
信じられないのに、否定が出来なくなる苦痛を味合わされてばかりだ。
特に担当を受けるクラスは毎日のように授業を受け、世の中はおかしすぎると思っていた。



 葛城が教科書を手に、教室を歩き回る。
下を向いているのにも関わらず、上手い具合に机と机の間を通り抜けた。
 饒舌になめらか、国語に酔いしれた授業も悪く無い。
 聞けばの問題だ。
見たら信じられないのだが。
「っつわけで、ここは……」
 ぷちりと説明が途切れた。
 窓の外を見ていた一がそれに気づき、顔を上げると、頭上で葛城が教科書を丸めている。
近くに居たことにも驚いたが、何をするのかと凝視すれば視線の先に居眠りこけた翼がひとり。
 一はギョッとして葛城を止めようとする。
 さっぱり出ていなかった授業を、3年になって…悠里の力なのか、B6も出るようにはなった。
完全で無く遅刻も多々あり、居眠りも常連だけれど、だいぶ素行は良くなった方だ。
今も瑞樹と瞬は翼と同じように寝て、悟郎と清春は遅刻で不在席ではあるが。
「葛…」

「真壁ぼん、起きやがれ!!」

 一の声を遮って、葛城が教科書を丸めたもので翼の頭部を叩いた。
スパン!と良い音と共に、葛城の怒鳴り声がかぶさる。
 止め損ね手が空しく伸びたまま、一は絶句した。
他のクラスメイトも驚いて葛城を凝視する。
 真壁ぼんってなんだ。
ぼん?
つか叩いた??
 色々な疑問や驚きが駆け巡るも、誰一人声に出すことは出来なかった。
「…ったぁ」
 静寂しきった空間で、目覚め悪い翼の声がこぼれる。
随分な音だったのに、瑞樹と瞬は未だ睡眠中だ。
 翼は頭を擦りながら身体を起こし、葛城を見て叩かれたことを察した。
「What?……ナンだ、原因はオッサンか?」
「良い度胸だ、真壁ぇ。俺の授業で眠りこけて!良い筈が!無い!!」
 どんな根拠だ。
 しかも、翼だけでなく他のB6やクラスメイトも数名寝ている。
翼限定の口調は可愛がっている証拠だが、俺様すぎだ。
一やクラスメイトはそう思うも、今ここで入っていこうという勇気は無いので、黙っておく。
「給料日前だからって、ヤツハズレするな!!」
 バンッと勢いよく机を叩いて、翼は立ち上がった。
丸めた教科書を戻した銀児がにやにやと笑いながら再度、翼の身体にべしりと叩く。
「八つ当たりだ、坊ちゃんよぉ!!」
 肯定した態度ではあるが、翼の間違えが面白いのか、葛城はケラケラと笑っている。
それが癪(しゃく)に触り、カチン!と音を立てたように翼がキレた。
「Shit!黙れ、オッサン!!」
「葛城先生…いや、銀児先生って呼べ!真壁ぼん!」
「I don't know what's what. そんなテンカイ何処にあった?!」
「俺様にケチつけんな!」
 ぎゃあぎゃあと揉め始めたふたりに、誰も何も言えない。
 一は「仲が良いってことにしよう」と思いまとめることにした。





 補習をちゃんと受けるようになってから、悠里はいつも嬉しそうな表情を見せていた。
それを見るために翼は受けているような…若干不純な動機がちらほらある。
「そういえば、翼君」
 問題を終えたところで、悠里が思い出した声を上げた。
「ナンだ、担任」
「最近、葛城先生と授業中でも仲が良いんだってね」
授業ちゃんと出てくれるようになって嬉しい。
 悠里は純粋に喜んでいるが、翼的にそういうので済まされない。
「…………誰に聞いた」
 叩き起こされた件を言っているのだと、翼でも容易く検討ついた。
何処がどうで仲が良いになるのか、そっちが問題で疑問だ。
 え?と悠里は首を傾げる。
「一君だよ?『アイツら最近仲よくてさ〜』って言ってたけど」
 見てみたいな〜と暢気に悠里は笑う。
 翼はその言葉にガクリと項垂れた。
机に肘を置いて額に手をつけ、しばし考える。
 何をどう否定することから始めようか。



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