予想以上にあの人が好き
うしこ様『徒然蜜柑 』より頂きました







「なんでこんな日に目覚ましが鳴らないのよ!」
リコは待ち合わせの場所へと急いで向かった。

待ち合わせの時間から10分遅れでリコは到着した。
(はぁ、しんど、って彼は何処かしら?早く見つけないと、『遅刻とは良い度胸だ』とか言われそうよね)
と『彼』こと赤司征十郎を探す。

「あっ!赤司君!ごめん…」
そう言って声をかけようとしたが途中で黙る。
見れば赤司は知らない女二人組と話をしていた。

(…あれは大学生ぐらいよねー、私より背高いし、凹凸もあるし、キレイだし…別に気にしてないけど)
そんな事を考えながら暫くそれを眺めるが、
(…帰ろうかな…)

なんとなく不愉快になったので帰る事にした。


赤司達の方向に背を向けて少し歩いたところで、
「来て声も掛けずに帰るとは何事だ」
と腕を捕まれた。
振り返ると赤司が酷く不機嫌そうな顔でこちらを見ていた。

「…手離して」
「…何故?そしてなんだその顔は?」
「別に」
「では何故帰ろうとした?」
「なんとなく」
「…何を怒っているんだ?遅刻をして怒りたいのは僕の方なんだが」
「怒ってなんかいないわよ!」
リコはそう言って手を振りほどく。
「…まぁいい、立ち話もなんだ。行くぞ」
そう言って赤司はリコに近づき、再び手を握りリコを抱き寄せようとする。
その時リコは赤司から微かに甘い匂いを感じた。

「!?触らないで!」
リコはそう叫び赤司の手を叩く。
「…本当にどうした?僕が何かしたのか?」
「い、いぇ、ごめん、とにかく着いて歩くから近寄らないで…」
「…逃げたり帰ろうとしたら許さないからな」
「わ、分かったから」

そう言って赤司は歩き出し、リコは後ろを着いて歩いた。


着いたのはとても趣のある喫茶店の様な店。
「マスター個室を借りる」
『はいよ』
「ここは…?」
「今日来ようと思っていた店だ、今日はリコさんの誕生日なのだから僕のとっておきの店を用意した」
「…」
「あの部屋だ、先に入っていてくれ、僕は飲み物を頼んでから行く」
「う、うん」
そう言われリコは先に部屋へお邪魔した。

「…なんか凄いわね」
部屋は凝ってあり、落ち着きのある良い部屋だった。


「っていうか、私なにしてんだろ…」
そう呟き、うなだれ、座る。

(赤司君はただ女の人と話していただけじゃない、美人だったけど…別に疚しい事なんてないし…でもなんかムカつく、しかも赤司君から甘い香水みたいな匂いがしたし…)
「何を一人でブツブツ言ってるんだ?」
「うわぁ!?いつの間に!?」
「入るときちんと言ったぞ、返事がないから普通に入ったが…」
「な、なんでもないから」
「…そうか」
そう言うと赤司も席の向かいに座る。

「まずは誕生日おめでとう」
「あ、ありがとう」
「そして…」
赤司は勢いよくリコに近づき、
「不機嫌の理由を聞かせてもらおうか」
壁際に追い詰めた。

「…不機嫌じゃないわよ」
「嘘はよくないな」
「ってか近いのよ!」
「顔がよく見えていいだろ?」
「そうじゃなくて…」
「ではなんだ?」

そうじゃなくて、赤司から匂うその香りが嫌なのだ、
そんなリコは絶対に付けないであろうその香りが赤司を覆っているのが、堪らなく嫌で…

「リコさん、嫉妬か?」
「はぁ?そんなわけないし、なんで私が赤司君に嫉妬なんかするのよ」
「…少しは素直になったらどうだ?そんな今にも泣きそうな顔をして、違うと言われても説得力はないぞ」
そこでリコは自分が泣きそうな事に気が付く、
「…別に泣きそうじゃない、ただ、ちょっと…」
「なんだ?」
「…む、ムカつくのよ、さっきの女は何よ、確かに向こうの方がキレイだし、背は高いし、む、胸だってあるし…私なんかよりずっといいわよね」
「…それで?」
「何がそれで?よ!バカ!あんなのが良いならあっちにすればいいでしょ!?大体近寄るなって言ったじゃない!今のあんた香水臭いのよ!そんなヤツ嫌いよ…」
「リコさ…いや、リコ、僕の事そんなに好きなのか?」
「…なに言って…!嫌いよ!あんたなんか…だいっきらい…よぉ」

そう言うだけ言って涙を溢し出すリコを赤司は抱きしめる。
「そんなに好きでいてくれてるとは知らなかったな」
「…だから、ちが、う」
「僕はリコが好きなんだ、他の女に興味は無い」
「…」
「だから安心するといい、リコ」
「…っ」
リコはそう言われ本格的に泣き出し、赤司の背中に手を回し、強く握る。
リコが泣き止むまで赤司は抱きしめ続けた。


「…気は済んだか?」
「う、うるさいわよ」
「まったく、減らず口だな」
「君に言われたくないわよ」
そう言ってリコは横を向く。

「リコ」
赤司が呼ぶのでリコは再び視線を交わす。
「あんな香水ごときで僕を縛るのは不可能だ、僕は十分貴女にハマっている」
「…」
「それに匂いが嫌だと言うのなら、今から僕を貴女の匂いに染めてみるというのはどうかな?」
「…君が言うと変態に聞こえるんだけど?」
「何を言う、先に香水臭いのが嫌だと言ったのは貴女だぞ、そんな独占欲バリバリの発言をした人の言葉とは思えないが」
「い、言わないで!恥ずかしい…」
「ハハ、では始めようか」
「えっ?いや、無理!ってか、やめ…」
赤司の近づく顔にリコは目を閉じる。


『おっとお邪魔かな?』

「へっ?」
「はっ?」

声のした方を見るとマスターが顔を覗かせている。
リコはあまりの事に固まる。

「マスター、邪魔をしないでくれ」
『おや、彼女を泣かせてる征十郎に言われてしまったな』
「彼女は泣き顔も素敵だ、問題ない」
『そうかい、じゃあ邪魔者は消えるよ、ごゆっくり』


「って!バカー!!」
我に戻ったリコは赤司を強く押す。
「いきなりどうした?」
「いいから退きなさい!!」
「…やれやれ」

赤司は残念そうにリコから離れた、
赤司がリコに背中を向けた瞬間リコは赤司に抱きつく。
「…リコ?」
「こっち向くな」
「…はいはい」
「赤司…いえ征十郎はずっと私の事好きでいてくれる?」
「何を今更な事を」
「だよね」
「むしろ別れたいなどと言ったところで聞くつもりはない、まず言わせるつもりもないが」
「そういうところは相変わらずよねー」
「フッ、慣れてもらいたいな」
「もう慣れたわよ、…征十郎、私ずっと好きでいるから。私だけの人でいてね」
「あぁ、僕もずっと好きでいるから、僕のモノでいろよ、リコ」
赤司のそんな言葉が嬉しくて抱きしめる手に力を込めた。
その背中は大きくとても暖かかった。


(いつもそのくらい素直であればいいんだがな)
(うるさいわよ)







おまけ


「ところで、なんで私がその…しっ、いや怒ってるって分かったの?」
「…あの状況で気付かないわけないだろ?大体リコが来たのは気づいてた」
「うわ、最低!」
「それにさっきブツブツ言っていた事は全て聞かせてもらった…フッ」
「今、鼻で笑ったわね!悪趣味!」
「なんとでも…、あと何時までそうやって抱きついているつもりだ?」
「えっ?ごめん…迷惑?」
リコは焦ったように聞いた。

「いや、ただ…さっきから当たっていてな」
「…はっ?」
「いや、普段から無いとか、ギリギリBとか、貧乳とか言われているが一応盛り上がりがあり、さっきから当たっている」
「…!?無いとか貧乳とか言うな!ってか変態!」
そう叫び赤司から手を離そうとする

「ちなみに今離すと、若干ムラッときているので振り返り押し倒す」
そう続けたので慌てて離すのを止める。

「…私にどうしろって言うのよ?」
「いっそ、リコが僕を押し倒すというのもアリだ」
「いやいや無いわよ!!」
「まぁ二者択一だ。押し倒すか押し倒されるか…よく考えるといい」
「そんな二者択一は嫌よー!!」


リコはどっちを選ぶでしょうか?
(結果は同じなんだがな…)
(無理!どっちも無理!)



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