それから約3日後の12月23日。
 高校卒業後、キセキの世代は関東を拠点に置いた所為か、急な一声でも参加率が上がった。この日も、少し早いクリスマスパーティー。冷えきった空気、高くも薄い青空の下、屋外に設置されたストリートバスケのコートにて。

「さみぃ。風邪ひく」
「峰ちんは、だいじょーぶ」
「心配ないっス!」
「青峰は絶対ない」
「安心しろ、大輝」
「天変地異でもし風邪引いたら、幼馴染みのよしみで看病してあげるね」
「みんな言うこと厳しいですね。まあ馬鹿は風邪引きませんから、否定もフォローも出来ませんが」

「テツが一番はっきり言ってんじゃねえか!!」

 寒いに一言加えただけなのに、紫原・黄瀬・緑間・赤司・さつき・黒子の順で打ち合わせしていたかのように流れ続く暴言。無視されるよりはマシだが、扱いが黄瀬以下で酷い。逆ギレは間違ってねえ、と青峰は開き直ったが、彼も比較対象を付けている辺り酷いし、類は友を呼ぶ。
 青峰は暴言を全て聞かなかったことにし、上着をさつきに投げ渡すと、バスケットボールを弾ませ始める。文句を言いながらも動き出す青峰に、周りは生温い視線をつい見せてしまった。
「バスケはまーいいけど、たしかに寒いねー」
 一番身体の大きい紫原が赤司に張り付いて暖をとっている。体温が低そうな男にくっ付いて意味があるのかと、緑間は問い質したくなるも、巻き添えをくらいたくないので黙っておく。
「誰かの家か、店に入る選択肢はなかったんスか?」
 黄瀬が首を傾げるだけで、ファンや若い女性たちから嬉しい悲鳴があがる――が、昔馴染みからすれば、ただのウザイ仕草である。青峰と黒子を筆頭に冷ややかな視線で、それを抑えつけた。
「私、素敵な喫茶店なら知ってるよ?」
「喫茶店、ありっスね」
「でしょー? なのに反対するんだもの」
 早い昼食を各自済ませてから集合しているので、腹ごしらえという候補はない。集合場所以外決まっておらず、ただゆるりと歩いていたらコートに着き、今に至る。
「男6人と女1人で喫茶店はないだろう」
「虚しくなるだけだ…」
「そうかなー?」
「そうっスかねー?」
 赤司と緑間の否定に、さつきと黄瀬が不思議そうな表情を見せる。女子と女子対応力高い男が納得する訳もない。
「ここからなら赤ちん家が近いじゃん」
「僕のところで良いなら提供するとは言ったんだが――」
 赤司が紫原の疑問に返答しながら、青峰へ視線を向ける。紫原もそれに倣い、「何がイヤなの?」という表情つきで見ると、青峰は反吐を出すような反応をみせた。
「女がいた後ってわりと生々しい。男のダチが行くタイミングじゃねーよ」
「んー…さっちん、そういうもの?」
 今度はさつきへ視線を向ける。悪意のない紫原の投げかけは、時に言葉の凶器と化す。
「私に聞くの?! えーっと…大ちゃんの意味はー……一人暮らしの女の子の家に髭剃りがあるようなもの?」
 戸惑いを隠せない。さつきは頷くことも出来ず、すぐにこの話題を終わせるのが最善だと思い、その方向で切り出す。
「あーそんな感じ、なのか?」
「それで合ってるなら、微妙な気恥ずかしさ? 気まずさ? は確かにあるかも…」
 さつきは気づいていないが、赤司と黄瀬は「青峰の生々しい発言は、実体験か、想像でこの確信か」という疑問が浮かんでいたし、どっちか見極めずにいた。知ってもしょうがないし、どうでも良いので、あえて問わずにいたが。
「だろ。男は女と違って恋愛相談なんてしねえし、いじりにくい。途中経過なんていらねえ、恋愛事は結果だけ寄越せ、てのも多いんだよ」

「全てに同意はしませんが、青峰君の『赤司君の家に行かない』には同感です」

 影の薄さで有名な黒子が、ゆらりと重たい気配をまとっていた。苛立ちというより、ぐれているような感じだが。
「僕は今、赤司君家で惚気なんて聞いたら、殺意が沸きます。というより、先輩たちに軽く殺(や)って来いって言われてるんで、制御出来ません」
 黒子のいう先輩とは、誠凛時代の一つ上の先輩たち――リコと同期だ。皆、支え合って頼っていたし、弊害から守りもしていた、とてつもなく仲の良い先輩たち。そんな彼らのことを、バスケが楽しいと再確認させてくれた憧れの先輩たちであり、尊い人たちであり、黒子の絶対である。
「なんだか物騒なのだよ」
「テツ君、格好良い…」
「え、さっちん今なんて言ったの」
 紫原がよくある「ちょっとそれはないわー」な面で、珍しくさつきの様子を窺った。
「紫原っち、今のは聞かなかったことにするべきっス」
「おいおい黄瀬にまでフォローされてんぞ」
「ちょ!? 青峰っちはもーちょい俺に優しく配慮してくれても良いと思うっスけど!」
「黄瀬、寝言は寝てから言うべきだ。あとやっぱり話しが進まないのだよ!!」




 こんな集まり、数日前まで皆、想像もしていなかった。
 仲違いし、高校がバラバラになった為、キセキの世代でイベント馬鹿騒ぎの習慣は途絶えていたし、今年こそやろうという発想もなかったからだ。
 それなのに企画が上がったのは、赤司の誕生日である20日。各々赤司に誕生日メールやら電話やらをしていたが、赤司から夜分、リアルタイムコミュニケーションを実現するアプリケーション・インスタントメッセンジャー経由で一言――
「戦略に失敗した』
と書き込むものだから、キセキの世代の心中はお祭り騒ぎだ。

 あの赤司が、失敗などという言葉を持っていたとは。
 誕生日は彼女と過ごすとか言ってなかったか、アイツどうしたおかしい今は雨か、外見たけど星空なんだが……大丈夫か、世界。
 落ち込んでるけど、この書き込み、赤司か? マジで?

 などなど、酷い発想が飛んだし、戦慄を覚えた。負けるという概念がほぼない男からの言動なので、そうなってしまうのも仕方がない。
 しかも途中で『彼女が起きてきた、落ちる』とだけ残し立ち去るものだから、次回予告のじれったさのような展開付き。
 詳細聞きたい、ネタでしかないし、落ち込んだ赤司マジ見たい。予想外すぎたあまり、急遽口実として手短なクリパを企画することとなった。しかも進学先でもバスケに夢中な連中が多く、アルバイト率の低さから勢揃いしてしまった訳だが。


***


「結局失敗だったの?」
 くすっと小悪魔な笑みを浮かべるさつきは、もはや狩りである。男ではなく、情報の。さつき、恐しい子。
「いや、結果から言えば、上手くいった。あんな表情みたことなかったしな」
 怯えながら微かに零した言葉、あの雰囲気だけでも十分お釣りがくるものだ。
「黒ちん、まったまった」
「離して下さい。やるなら今です」
 青峰なら背中から飛び蹴りするような勢いの黒子を、赤司から離れた紫原が押さえる。いつもならば完全放置だが、さつきと駄菓子で交渉成立している為、やらねばならなかった。
「だが、さつき。君が問うことでもないだろう」
「え?」
「聞いているだろ、彼女から」
 話についていけない、と驚きの表情を見せるさつきに、赤司は視線を落とし、瞼を細める。ワザとだということを彼は読めているからだ。
 全部察していると分かっていてもしらばくれるさつきに無意味だとは思わない。この演技で、何度も、色々な場面を乗り切ってきたのだろうから。
 ただ昔馴染みという時点が、不利である。赤司だけではなく、他も見抜けてしまう。
「なんで知ってるの? って言いたいところだけど、やっぱ分かるか」
「僕の好みに当てはまりすぎていた。あれはさつきの助言が必要になる」
「恋する乙女の味方をしただけだよ?」
「その報酬が後日報告、か」
「うんうん、リコさん必死だったし、可愛かったもの。私も頑張っちゃった」
 さつきは丁寧な相槌をしない。赤司なら、それで十分、推測と答えを導き出すからだ。なので、情報を多く得れるよう、巧みな流れを優先させた。
「リコさん、可愛かったでしょ? 頭から爪先まで」
 服装と下着は勿論のこと、文字通りそのままの意味で、髪型からネイルまで。情報が足りなかった、などという言い訳は一切しない。
「さつきが入れ込むだけの、強さはあるか」
 100名以上いる部員、過酷な評価と軍割り。そこの頂点であるレギュラーと共にいたさつきは、かなり浮いていた。バスケに情熱を注いでいた為、割り切れていたし、部活内で問題はなかった。
 けれども、部活以外の学校生活でもレギュラー部員(しかも顔の良い)たちと居たからか、誰が見ても「綺麗」と評されるさつきでも、嫉妬され、クラスにて頻繁にハブられていた。そこで人と上手く接する方法も覚えた訳だが。結果、さつきは嫌われる程の性格でもないのに友達が少なかった。
 その嫌な空気は、高校でも起きている。青峰や他の部員がそこそこ根回ししていたし、さつきもそれに気づきながらも黙っていた最中――堂々と喧嘩を売ってきたのがリコだ。
「貴方は綺麗だけど、負けないわよ』
 相手を褒めているのに、一部の容姿に逆ギレしている。
 貶すなら全部貶せば良いのに。褒めたい訳でもないが、それは事実だと肯定していて。
 とにかく反応が新鮮で。可笑しくて。こんな人いなかったな、がさつきの感想である。
「大事な友達だもの。だからリコさんの友達として一言。お酒はやりすぎだと思うよ?」
「緊張していたから、軽いものを用意しただけだが、そこにひっかかるとは思っていなかっただけだ」
「アルコールさらっと混ぜたことに反省しないんだ…というかリコさん誕生月、2月だからまだ…」
「――まあそれは良いとして」

「全く良くありません」

 さつきと赤司の何とも言えない微妙に空気を見守っていたような、逃げていたような、放置していた連中で、黒子だけが動いた。するりと紫原の拘束から逃れ、青峰からボールを奪い取り、赤司の腹部目掛けて投げる――も、バシッと乾いた音が鳴り響くだけ。赤司に自然な動作で取られてしまう。
 黒子による、舌打ち一つ。紳士と評判らしからぬ、やさぐれモードだ。
「赤司君、勝負をしましょう」
「受けて立とう、テツヤ」
「え、何この修羅場。なんスかね」
「修羅場? 姉をとられた弟のようなものだろ? つーか、やっとバスケ出来るか」
「青峰が的確なんて…お前は誰だ」
「オレはオレだ!!」
「結局バスケするのー?」
 黄瀬の戸惑いを放置して、緑間と青峰と紫原が準備体操を始めている。この場に首は突っ込まないが、バスケはする、という利害一致。
「さつき、チーム編成しろ」
「はーい。ムッ君、バスケ久しぶりなんだよね?」
 黒子と赤司が空気の悪い亜空間らしき雰囲気を広げているので、介入せず。さつきが見ない振りをしながら、振り分けに入る。
「軽く流すていどー部活ほどの運動もしてないし」
「俺もっス!」
「モデル黙れ」
「俳優業なんか始めて、しかもスポーツマン気取ってた役なんかしてた男は、静かにするのだよ」
「あの俺出来ます的なウザ顔がうぜえ」
「褒めなくても良いっスよ〜」
「え? 褒めてたんだ、峰ちん」
「え? 何処が…?」
 緑間は律儀に調べたのだろうが、青峰の場合、さつきと一緒に黄瀬の自己主張を聞かされたという強制である。全く興味のない紫原が「そんな馬鹿な冗談やめなよ、きもい」と露骨に呆れた面を見せるので、青峰は苛立ちを通り越し、考えることを放棄した平凡な返答しか出来なかった。
「仕事はどうしたのだよ?」
「夕方から入ってるんで、その時間までクリパ参加しまスから!!」
「夕飯どうしよーチキン食べたいねー」
「あー夕飯も黄瀬がいるうちに決めようぜ」
「紫原っちと青峰っち、えぐい!!」
「決めたよー! きーちゃん静かに」
 さつきが手を叩いて軽く音を鳴らし、注目を促す。
「赤司くんチームは赤司くん、ミドリン、きーちゃん。テツ君チームはテツ君、大ちゃん、ムッ君ね」
 頭脳派と元相棒が基本軸だ。あとは現役ではない紫原と黄瀬を、一緒しない。この二人、どちらに振り分けても良かったのだが、黄瀬の青峰と戦いたい願望は強い。紫原もどうでも良い精神なのもあり、黄瀬の主張が添ったまでだ。
「負けませんよ」
「テツヤは…いや、誠凛は本当に仲が良い」
「彼女は大切な…とても大切な人、ですから」
「僕たちの輪ならさつきみたいな存在か」
「……赤司君がそれを言いますか。ケンカ売ってますね、僕にも、彼女にも」
 黒子は声に出したが、緑間と黄瀬は「本人(※桃井)がいる前で言うか普通」という表情を見せた。彼らは中学時代、確かにさつきを大切にしていたし、今も大切である。だが同年代で声にするなど、恥ずかしいもの。黒子のような誠凛ラヴの明解さは出せない。しかも、
「……え? え、えっと?」
 蔑ろにされていない、そこそこ大事にされている自覚があったさつきですら、羞恥を感じる訳で。どう反応して良いか、困った態度をとっていた。
「さつき、」
「な、なに?」
 首根っこをかきながら気怠そうに名を呼ぶ青峰に、さつきは気恥ずかしそうに振り返る――が、
「ルールゆるめで審判しろ。テツの私情はどうでも良いが、赤司には負けねえ」
「え、ここも修羅場じゃないっスか」
「修羅場とは昼ドラで使うものなのだよ」
「緑間っち、それ誰の教え」
「黄瀬に侮辱されるとは…屈辱だ、許し難い」
「峰ちん、なんか色々残念だねー」
「はあ?! オレが残念って、なんでだよ!」

「もーなんなの!!!」
 相変わらずベクトルがおかしい青峰と、フォローすらしない連中に、さつきが逆ギレで叫んだ。



「もーいいです。赤司君の散漫した浮気みたいな気持ち、メール送ってチクるだけです」
「黒い! 黒子っち、文字通り黒い!!」


それぞれの人がこうむった ちょっとした呪い
-Das Fluchlein, das Jeder mitbekam-








 3on3を一頻り楽しみ、夕方から仕事の黄瀬と駅前タクシー乗り場で別れた後。夕飯の食材を買い込み、黒子の家――場所については討論の結果である。不毛なくらい揉めた――でクリスマスパーティー二次会をすべく、一行は向っていた。

「ねえ、赤司君」
 微かに柔らかな表情でスマートフォンをいじる赤司に、リコへメールを送っているのだろうと思ったさつきは、終わるのを待ってから声をかける。他の4人は少し前方を歩いているので、声の音量を落とせば聞こえないことも見計らって。
「どうした、さつき」
 コートのポケットに仕舞って赤司が振り向いた時にはもう、いつもの表情だった。さつきはそれにあえて気づかぬ振りをし、後方で手を合わせながら、ワザとらしく顔色を窺う態度を見せる。今から質問するからよく観察しますね、と言わぬばかりに。
 さつきがここまで露骨なのは赤司だから。普段ならあえて隠す方向で行くが、それを彼にすると、気づかれたくないところまで察してくる。故に、赤司用の作戦なのだ。
 ちなみに、赤司とさつきは夕飯用の買い物袋を手にしていない。赤司はこの面子だと持つ気がなく――彼が配慮するのは今やリコくらいである――、さつきのは紳士の黒子が持たせなかった。なのでふたり分は、他4人で分担している。
「大きなお世話だと思うけど、リコさん不安がってたから、聞くね?」
「不安…?」
 若干眉が動いたことに珍しさを否めなかったが、彼氏として当たり前の態度を取る赤司に、さつきは友人として好感を持つ。人との出逢いがここまで良きものにするとは、と嬉しくもなる。
「赤司君、リコさんには丁寧な態度を取るんだって?」
「リコさんに丁寧なのは当然だろう?」
「あまやかす意味合いの丁寧、だよね…うん、それは良いと思うけど、さん付けとか?」
 選手と『カントク』の間柄なら、赤司が年上のリコへ敬語なのは自然だ。だけれど、距離も近くなり、キセキの世代や洛山高校の部員と接する赤司を見るようになってから、リコは「これで良いのかな?」という気持ちをいだいた。
 悲しいほど、距離を感じる訳ではない。あまやかされていることに気恥ずかしさもあるし、自分にしかしない柔らかな物腰も分かっている。
 だから赤司に触れなかったし、要求も述べなかった。
 でもやはり気になるが故、相談に乗ってくれたさつきに報酬である事後報告を兼ねたお茶会をした際、零してしまった。それを今、さつきが問題人に吹聴している。
 こういうことに対しリコは案外彼女らしい性格を見せない。思慮深いことと、恋愛に奥手かつ初心だからである。そして赤司が全て察することが出来る程、乙女心は簡単でもない。だから、さつきが余計なお世話だと思っても、声にする。
「『リコさん』?」
「そう、それ」
「嫌がってた?」
「うぅん。赤司君のは好きだって言ってたよ。ただ周りには呼び捨てだから、不思議みたい」
「そうか…」
 その返答に不思議そうな表情を見せるのは、乙女心の深さに驚いているのだろう。赤司が思案する素振りを見せる。
「あと丁寧な口調も」
「あぁ、それは算段だ」
 そこには即答であり、さつきは「やっぱり…」と内心思う。
「リコさんは抵抗やら危機感の壁が何層もあって、厚みも異なる。しかも自分から壁を崩し接する相手には、馬鹿みたいに無防備になる。それを知っていると長期戦でいくのは当たり前だろう」
 赤司が前者からなのは敵対校という初対面だったから。そして後者は誠凛、黒子との姿を見て気づいた。無防備に笑う彼女と対面する為には、時間を有する。そう的確に読み取り、挑み、赤司はリコの彼氏の座を手にした。
「今後は噛み砕いた口調にしていくの?」
「ゆくゆくは。でも、現状も気に入っている。どうなるかは…リコさん次第だな」
「……うわあ」
 明らかに驚嘆の声を上げるさつきに、赤司は不足があったかという表情を向ける。不備などなかった自覚の元、起きる態度だ。
「うぅん、なんでもない」
 普段から誰にでも礼儀正しく物腰の柔らかい印象を持たせる赤司だが、こういう態度や発想はなかった。
 彼の変化に、人との縁の深さを感じる。
 友人として素直に祝福したい。仲がこじれてしまった過去があるからこそ、強く、思う。
 さつきは前方を歩く4人の後姿を一瞥し、少し過去を馳せてから、今の思いを心の底へ大事に仕舞い込んだ。
「安心した。やっぱり余計なお世話だったね」
「気にするな。リコさんの本音が聞けたのは僥倖だった」
 あっさりそんなことまで言うものだから。貸しね、とも言えなかった。情報収集力に長けていると自負しているからこそ、駆け引きに少し負けたとも思うが――それ以上にやはり嬉しくて。
「……ほんと、赤司君の彼女がリコさんで良かった」
 さつきは優しく微笑んだ。



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