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イトル未定
08

帰りは当然、彼女を自宅まで送って行く。
俺がついて行くことで却って不安にさせてしまわないかとも考えたが、ナマエが危険な目に遭ってからでは遅いので、遠慮する彼女に親切の押し売りをする形で強引に送って行った。
もうバスも無い時間帯で、女性がひとりで歩くには遅すぎていたため、着いて行って正解だった。
彼女はマンション暮らしで、且つ管理が行き届いてセキュリティーもしっかりしてそうな物件であった。

「送り狼には絶対にならない!ナマエがちゃんと家に入ったら帰るから!」
「わかったわかった。ありがとね、ピアーズ」

それでも、変な奴に待ち伏せされていたらと考えると、帰宅を見届けないわけにはいかなかった。
なんとかナマエに頼み込んで付き添わせてもらう。
彼女ももうわかってくれたのか、少し呆れて、しかし笑顔で良いよ、と言ってくれた。
男として当たり前かもしれないが、いつの間にか本当にあんたのことほっとけなくなってる……。
周囲に不審な動きがないか気を配り、ナマエの部屋の前までの廊下を歩く。

「着いたよ!」
「おう」

そして、鍵を取り出す彼女の背後を守るようにして解錠を待つ。
カチャリという音と共にドアが開き、これでやっと俺は安心することができた。
しかし、ドアを開けたままこちらを向いたナマエは玄関から動こうとしない。

「ナマエ……?」
「ピアーズが帰ると思うと寂しくなっちゃった」

先ほどまで足取りも普通だったのに、彼女は酔っぱらっているのだろうか。
潤んだ瞳から目が離せない。
駄目だ駄目だ!まだ出会って間もないのにこんなの!

「ねえ、一緒に来て」
「ナマエ……」
「ピアーズ、だめなの?お願い……」
「ナマエー!」

駄目だー!あんたこそお願いだからやめてくれー……

「おい、寝るなら仮眠室行け。そのかわり残業だけどな」
「いてっ」

何か書類の束のような物で頭をはたかれた。
状況が読めず顔を上げると、フィンがこっちを見て笑いを堪えている。

「おまえ、隊長が呆れてんぞ。どんな夢見てたんだよ、まったく」

横に座っていたマルコには鼻で笑われた。
昨夜の嬉しさのあまり、午前中にいつもより多くトレーニングしたのが祟って居眠りをしてしまっていたらしい。
しかも、昨日の夢まで見て、且つ途中で捏造が入り……。
一体、俺の頭の中はどれだけ花畑なのだ。

「俺、なんか寝言言ってたか」
「誰だよ、ナマエって。彼女かー?」
「あ、もしかして昨日一緒にいた人ですか」

俺は頭を抱えた。
それはもう、絵に描いたように頭を抱えた。
面倒なことになりかねないと、チームメイトには新たに友達ができたことは伏せておこうと思っていたのに。
しかも、何故ナマエと一緒にいたことを見られているのだ。
あんたら更衣室にいただろーが!
寝言は自業自得だとしても、面倒事がすぐそこまで迫って来ているようで、俺は目の前が真っ暗になりそうだった。


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