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イトル未定
05

隊長と共に任務から帰還した俺は、珍しく、採集してきた証拠品や検体をジュラルミンケースに入れてオフィスを歩いていた。
公私混同は意志に反するが、今回だけと自分に言い聞かせて足を進める。
任務で得られた品々をナマエに届けている最中なのであった。
名刺に記載されている連絡先はBSAAから支給されている物であるから、事務連絡以外にそれを使ったらそれこそ公私混同となってしまう。
そのためどうにかして直接、彼女と話がしたかった。
何度も名刺を見て頭に叩き込んだ彼女の部署があるフロアに行くと、そこはオフィスとラボが廊下を挟んで存在していた。
見慣れないフロアで、ガラス張りのオフィスを見渡してみるも、ナマエらしい人は見当たらない。
反対側のラボを見てみたが、思わず苦い声を漏らしてしまった。
皆、作業着を着ておりどうにも見分けがつかないのである。
自分たちも支給品を着ている身のため、恐らく初見で個人の見分けをつけるのは難しいであろう。
仕方なく、廊下の端まで行ってみて、それでも駄目であった場合は潔く電話してみることに決めた。
キョロキョロしながら歩いていると、本能なのか考える前に胸が高鳴った。
私服でもないのによく見つけたな、と誰に対してでもないが得意気になる。
目を凝らして確認してみるとやはり視線の先にいた女性はナマエのようであり、無菌エリアにいる彼女の作業が終わるのを今か今かと待っていた。
気を抜くと標的を狙う危ない目つきになりそうだったが、じっと観察していると彼女は何か液体を分注しているようで、その手つきは慣れたものである。
そして、操作が終わったのか、チューブ類をどこかにしまうと彼女はそのエリアから出て来て手袋等をゴミ箱に捨てていた。
その時、顔を上げたナマエと目が合った。
睨んでいるように見えたらマズいと思い、我に返った俺は片手を上げてからケースを指差した。
用件が伝わったのか、彼女は数回頷くとニコニコしながらこちらへやって来てくれた。
証拠品を預けに来る奴にはいつも笑顔で接しているのであろうか。
そう思うと今まで自分は何をしていたんだという気持ちが拭えない。
もっと早くこの仕事を隊長から聞いておけば良かった。

「ピアーズ、任務お疲れさま」
「ナマエこそ。これ頼むよ、詳細は中に書いてある」

手際よく受け渡しを済ませると、ラボに引き返そうとするナマエを呼び止めた。
これを伝えるために来たのであるのだから、チャンスは物にしなければ。

「待って、今日って残業あるか?」
「ううん、今のところ予定は狂ってないから無いと思う」
「なら夕飯でもどうだ?」

出来るだけ自然に。
内心、何て返事をされるか気が気でなかったが、考える素振りのナマエに固唾を呑んで答えを待つ。

「いいよ。行こう!」
「じゃあ、定時にエントランス集合な」

よっしゃー!
喜びを顔に出さないよう平静を装い、スキップしそうな体を抑えてエレベーターまで戻った。
任務明けであろうが疲れなど一切感じなかったが、さっさとシャワーを浴びて夜に備えて仮眠をとるとしよう。


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