眼鏡のズレを直し、端末から顔を上げたハニガンがナマエに微笑んだ。
「プログラムお疲れ様。怒涛の一週間だったわね」
「ありがと……。やっと週末だよ」
自分のデスク荷物を置いてに腰を落ち着けた。
「でもすごいね。頭だけじゃなく身体も疲れてるし、怪我も反映されてるし」
ズボンの裾を捲って擦りむいた痕が残る膝をまじまじと見つめ、話を続けた。
「そうね。命に関わるような重傷じゃなければ現実にもリンクするみたい」
そのまま二人で今回のプログラムについて話していると、この部署に関係者たちが続々と集まってきた。
一気に騒がしくなる。
「お前、ナマエの尻触ったらしいな。セクハラか」
「人聞きの悪いこと言うなよ、一緒に任務をこなした仲だろ。それに、俺は下から支えてただけだ」
「ちょっと貴方、ナマエの怪我、そのままにしてたわけ?」
「下らん。あれくらいどうってことないだろ」
「ナマエ、俺の土鍋知らないか」
それぞれがああだこうだ言い合っているが誰も気に留める様子もないので、これが彼らの日常らしい。
「いや……知らないよあ。あれ、あそこにあるのは?」
ふと、ハンクのデスクを見ればそこに土鍋は置いてある。
ナマエがそれを指摘すれば、彼は何かを思い出したようだった。
「今回はあのプログラムでの訓練だったから置いていったことを失念していた。ナマエ、手間をとらせたな」
いつも持って行ってるのか、と内心思ったナマエだったが、デスクへ向かうハンクを笑顔で見送った。
「ナマエ、本当にお疲れ様」
個性的な面々を目の当たりにしたハニガンが半ば憐れみの表情で言った労いの言葉に、ナマエは苦笑いを返した。
皆とペアを組んでの訓練は楽しかったけど、当分の間はデスクワークでいいと、疲労であまり働かない頭でぼんやり考えていたナマエだった。
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