日が傾き、空は真っ赤に染まっていた。
そういえば、彼の瞳も今は紅い色をしていたはず……、と隣を見ればそこにはスタンロッドを振り回す敵兵が。
「わー!ウェスカーさんどこ!?」
ナマエは、先程までウェスカーと共に行動していた。
そのはずだったのだが、今は取り残されており、徐々に敵が集まってきている。
あ!ひとりだけあんなとこに……!
必死で逃げ回っていると、ナマエは崖のような場所にある足場に彼が立っているのを見つけた。
ウェスカーは口角を上げるといとも簡単にその高所から飛び降りると、ハンドガンで敵の頭を撃ち抜き掌打を喰らわせた。
「置いてかないで下さいよ……」
「囮として動けば良いだろう」
そのほくそ笑んだ顔、ぶん殴ってやろうか……
いやいや、そんなことできる訳ないし
その前にやられるわ
無闇に手出しができないため、奥歯を噛み締めて彼の発言を耐えていた。
そして、仕方なくアイテムの回収だけでもしておこうと思い、ウェスカーに吹き飛ばされた敵が倒れていた場所を隈無く辿って行った。
マグナム独特の腹に響く音に顔を上げれば彼はもう別の場所で闘っており、どうやらガトリング軍曹を乱射する隙を与えずに倒したらしい。
一緒に連れてってくれればいいのに……
あ!しかも一人だけターザンで移動したんだ!
くそう……
アタッシュケースを整理し、有刺鉄線の柵に沿ってウェスカーの方へ向かっていると、恒例の如く敵が出現する。
手に入れた手榴弾で応戦すれば何とか近くの敵は倒すことができた。
しかし、遠方の兵士が投げたダイナマイト気づかなかったナマエは、爆発する瞬間に近くにいてしまったため、爆風に煽られ前のめりに転んで地面に膝を付いていた。
「いった……」
敵の攻撃に気づかないなんて不覚だった……
ちょっと脚ジンジンするんだけど、とうしよう……
ケースの中のハーブを見るも、これはウェスカーのために調合したもので、不注意の怪我にぬけぬけと使える程、ナマエは図太くなかった。
ずっとその場に座り込んでいるのも危険なので、とりあえず砂埃だけ叩いて立ち上がった。
「何突っ立ってるんだ」
「あ、すみません……」
上の敵は一掃したのか、下まで下りてきた彼は、辺りをぐるりと見回すと、少しずつ近づいてきていた敵を次々にライフルを命中させていった。
「さすが〜」
「フン」
今のところウェスカーに怪我はないようで、ナマエは安心したと共にそれもそうかと納得した。
しかし、彼女のケースから調合ハーブを取り出すと何か考えるように無言でそれを見つめている。
ま、まさか、私が怪我をしてるのを知ってて手当てしてくれるとか……!?
ドキドキしながらウェスカーの動作を見ていると、彼は自分の首元に調合ハーブを吹きかけた。
「えええ!?ウェスカーさん怪我してたんすか!?」
「いや」
「はい?じゃあなんで……」
「暑かったから使ってみた」
なんだこいつ!!
人が危険を顧みず集めて作ったハーブをこんな理由で使いやがって!!
「だが、大して変わらんな」
くっそ、だったらそのジャケット脱げや!
「じゃあ、私も使ってもいいですよね」
「お前、怪我してたのか」
「まあ、ちょっと、爆発に巻き込まれて……」
サングラスのせいで表情はよくわからないが、再び彼は無言になり、彼女を見ているようだった。
そして一言、
「馬鹿か」
彼女を鼻で笑って踵を返し、二体目のガトリング軍曹にライフルを構えた。
遠方からの連続射撃を確実に急所に当てて、先程と同様、反撃の余地を与えず倒していった。
「馬鹿とは何ですか!」
「そのままの意味だ」
「い、言って、おきますけどね!レオンはちゃんと一緒に行動してくれましたし、エイダは怪我の手当てしてくれて、クラウザーは囮案を却下してくれて、ハンクは爆風から護ってくれました!!」
「それがどうした」
「う、ウェスカーさんは一人でどんどん行っちゃうし……」
「甘えるな」
低い声にナマエは思わず口をつぐんだ。
「第一、お前は自分の仕事を責任持ってやってるんだから放っておこうが問題ないだろう。それとも何か、心配されなくて寂しいのか」
ニヤリと意地悪く笑うウェスカーに、ナマエは恥ずかしくなって背を向けた。
「わ、わかりましたよ!別に怪我ももう平気ですし……あっちで兵士やっつけてます!」
「可愛げのない奴だ」
どっちがだよ!
こうして二人は背を向けて別の方向へ歩き出し、ナマエは手榴弾を握りしめ、ウェスカーはマグナムに弾を装填した。
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