海の上の孤島で、ガスマスクの隊員がまた一人、敵兵の首をへし折った。
「痛そ……」
「そこのアイテムは頼んだ」
板でできた床を軋ませながら木造の建物に入り辺りを物色していく。
ベッドの上、引き出しの中、樽、粗方回収を済ませた所で兵士達が窓を乗り越えてなだれ込んで来た。
「耳を塞いでいろ」
ナマエは、ハンクの言う通りに耳を両手で塞ぎ、目を薄く開けて彼の攻撃に備えた。
敵の持っていたダイナマイトを巻き込んだ爆発の衝撃は凄まじく、二人を囲んでいたほとんどの兵士が吹き飛ばされた。
その爆風からナマエを庇うように、ハンクは彼女に覆い被さっていた。
「大丈夫か?」
「うん、ありがとう。ハンクは?怪我してない?」
「ああ、無傷だ。あそこから上に出よう」
マスクで少し籠ってはいたが、耳のすぐ傍で聞こえた彼の声にナマエは思わずドキドキしてしまった。
気を取り直して彼の後ろ姿を追う。
階段を上れば待ち構えていた敵にマシンピストルを打ち込んで蹴りを喰らわせているハンクの勇姿が。
あの重装備でこの身のこなし!
きっとあの下には逞しい肉体が……
その時、けたたましいモーターの音がナマエの耳に届き、止めどなく幸せな妄想をしていた彼女を現実に引き戻した。
「うっわ、叫びながらこっちに来てる」
「下は危険だ。あのターザンで移動する」
ハンクの指さす方を見れば、そこにはナマエが以前から乗ってみたかったターザンがあった。
孤島1では乗れなかったので、実は楽しみにしていたのだ。
「でもこれ……一度にひとりしか運んでくれないよね」
「そうだな。ナマエは私にしがみついていろ」
なんと!?
ハンクにしがみつくって……おんぶみたいにすればいいのかな
戸惑っているナマエだが二連チェーンソー男は確実にこちらに近づいている。
そして、物凄い脚力で二人のいる建物の上にまで飛び上がってきた。
「うぎゃー!!チェーンソー!!!」
なかなかしがみつかないナマエに痺れを切らしたハンクは片手で彼女を抱きかかえる。
「ちょ、わ」
「腕を回しておけ」
もう片方の手で持ち手を握ると、重力に従い滑車が動き出した。
「速……!」
「落ち着け。二人分の重さがかかってるんだから速いのは当然だ」
直面する風圧に耐えきれず、ナマエはハンクのベストに顔を埋めた。
間もなく小さな衝撃と共に、滑車の音が止まる。
「下ろすぞ」
「あ、お世話様でした……」
ガッシリした腕の感覚を思い出して緩みそうになった表情を引き締め、ナマエは頭を下げた。
「私に首を晒すとは処刑されたいのか」
「ちっがうよ!」
慌てて顔を上げて抗議する彼女に対して小さく笑みを漏らすと、ハンクはマシンピストルを構えて来る敵に備えた。
再び下に下りていたチェーンソー男が近づいて来ている。
いつ来るかとナマエが身構えて踏ん張っていると、奴が飛び上がってきた。
「うおおおああああ!?」
「色気も何もないな」
すると、空中で逃げ場のないチェーンソー男にハンクがトリガーを引き続けた。
まともに弾を喰らった男はそのまま落下し、場所が悪かったのか海底に沈んでいったようだ。
既に姿はない。
えげつない仕留め方ですな〜
てか色気ないのは余計だっつの
気にする余裕ないから!
肌の露出のないハンクに怪我の手当てをする必要も見当たらないため、ナマエは閃光手榴弾を使って彼のサポートをしていた。
チェーンソー男を葬った今は武器を持った敵兵がちょろちょろと動き回っている。
「ねえ、ハンク……」
ってこいつはマスクを被った敵だ!
あろうことか相棒と敵を間違えたナマエは少し離れた場所で処刑を行っている彼の元へ助けを求めに走っていった。
「ハンクー!」
「地味に傷つくぞ」
「ご、ごめ……」
息を切らしながらやって来たナマエの背後に銃口を向けて数発撃てば、敵はすぐに消えた。
「怪我はないな」
「うん!」
そして、現れた二体目のチェーンソー男に二人はそれぞれ重火器を持って立ち向かっていった。
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