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HELLO
ようこそ・プランB

家族と等しい存在という人を隊長から紹介してもらう待ちに待った日がやってきた。
尊敬する隊長の顔に泥を塗るようなことのないよう、細心の注意を払わなければ。
行き慣れた研究所の廊下をいつもより長く感じる。
目的のオフィスの前に着いたようで、廊下での待機を命じられて、中が気になるもののその指示に従った。
クレアさんの後輩ということは、俺よりも年上なのだろうか。
ここでバリバリ研究しているならば、それなりの貫禄や風格も持ち合わせていたり……?
部下として以後お見知り置きをという意味を込めてスマートに挨拶できたら、と思う。
隊長がその人を呼びに行った間も、一体どのような人を連れてくるのかやたらと想像してしまい、オフィスから出てくる顔見知りの研究員に挨拶をし忘れるところであった。
まだかな、と思い顔を上げると、ちょうど隊長がドアを開けて戻ってきた。

「ほら、この子がナマエだ。こっちが部下のピアーズ」

後ろに着いてきたその人を紹介するために、隊長が一歩横にずれて、それからその人にも俺を紹介した。
そこにいたのは、なんというか、俺の想像していた貫禄とか風格とはかけ離れており、この前任務を共にした新人よりも若いのではないかという印象であった。

「はじめまして、ピアーズ」

そして、予想していなかった少女の登場と、やわらかく微笑んだ表情にどう返して良いのかわからず、当初の予定だったスマートに挨拶をするという目標はあっけなく崩れた。

「あ、えっと、よろしく……」

しかし、そもそも自分の想像の半分は隊長の話からの物である。
まさかこのような年端も行かぬ子が、やれ実験だ研究だで徹夜するかしないかの毎日を送っているだの、サンプルを持って行けばどんなに忙しくても解析を受け付けてくれるだの、そのような話と結びつくはずがない。
もしかしたら若手だからといって扱き使われているのかもしれない。
隊長は家族も同然な大切な子なのに心配にならないのか。

「おい、何か言いたいことでもあるのか」

悶々とした気持ちが態度に表れていたらしく隊長に指摘されてしまった。
しかし、せっかく言う機会を与えてもらったのである。
俺からも隊長にいくつか聞くべきことができた。

「隊長!今まで何やってたんですか!」

つい語気を荒げてしまったら、隊長はますますどうしたのだという表情を濃くした。
隊長が心配していないなら俺がその代わりになれば良い。

「この子が寝る間も惜しんで実験してるってこの前言ってましたけど、ちゃんと睡眠とるように言わなきゃダメですよ!」
「え?いやナマエはもう……」
「そりゃあ俺らは多少の無理くらいどうってことないですよ?だけど」

言っても伝わらないのだろうか。
俺の心配を余所に、隊長はナマエの仕事ぶりに何の危機感も抱いていないように見える。
しかし、俺が訴えを続ける前にそれは遮られてしまった。

「クリス、私もう戻るね」

ナマエである。
もしかして、俺たちの会話が上司や先輩に聞こえていたら不味い状況になるのだろうか。
俺としたことが配慮が足りなかった。
返す言葉がなかなか見つからず、それでもどうにかしてナマエにはしんどい思いをしてほしくなかった。

「ナマエ、無理は良くない!何かあったら俺に相談してくれ!」

あの他意のない無邪気な微笑みに、俺に庇護する気持ちが生じたのか何故だか自分がどうにかしなくてはという気になっていた。
彼女は俺の呼びかけに何も応えなかったが、こちらを向いてくれたということは少なくとも聞こえていたはずである。
深追いして、ここでの彼女の立場が危うくなることは避けたいので、俺は隊長に向き直って話を戻した。

「隊長もここの激務は承知しているでしょう」
「まあ……」
「あんな小柄で若い子が、こんなところで……。もっと心配してください」

そう言って詰め寄ると、隊長に溜め息をつかれた。
彼女の話をする時の嬉しそうな様子とは対照的であった。

「若いって言っても、おまえと数えるくらいしか変わらないよ」
「え!?あの容姿で……?」

衝撃的な事実を聞かされた俺はかなり驚いた。
ナマエはとっくに成人していたということか。
しかし、それでもいくら懸命に研究に励んでいても体を壊しては元も子もない。
無理をしすぎて倒れたりしたら、隊長もきっと悲しむ。
それは絶対に阻止しなければならない。
これから任務のない時や訓練が終わった時は、ナマエの様子を見に来よう。
隊長は忙しいし他にもやることはたくさんある……、ナマエの健康管理は俺に任せてくれ。


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