倉庫と小説兼用 | ナノ





置について
伸び代は未知数

ナマエがここに来て初めての週末が訪れた。
彼女はこれまで、ルイスに彼の研究についてを、ジル、クリス、バリーには取り扱ってきた事件や特殊部隊のポジションやそれに求められる能力等を、そして今日の午前中はクリスに諜報活動の目的や実態を教えられた。
今週、時折オフィスでその姿を見かけたが、熱心に教えを受けており、隊員たちも研修のし甲斐があるように見て判断できた。
クリスも良い人材を招き入れてくれたことだ、たまには評価してやっても良いだろう。
レオン曰くトレーニングも怠ることなく取り組んでいるようで、今のところ問題もなさそうだ。
相性もいい様子なので彼を指導の担当にして正解だった。
ちなみに、来週の頭までレオンには任務を与えていたので、今日から少しばかりナマエの午後の予定は自主トレである。

「クリス、今日の研修はもう終わったのか」
「ああ。彼女は飲み込みが早いからこれからに期待できる」

クリスから隣のナマエに視線を移せば彼女は頬を赤らめていた。
評価されたのが嬉しいのだろうか、何とも初々しい反応だ。

「そうか。ではナマエはもう昼休みだな」
「あ、はい」
「それなら俺と一緒に外にでも食べにいくか」
「えええ、良いのですか……!?」
「勿論だ。ああ、クリスはもう行っていいぞ」

その驚く顔が可笑しくて思わず広角が上がる。
クリスはハイハイと返事をしながら片手を挙げて席を外した。
ナマエは席を立つクリスを目で追っていたが、それに気づいた奴が「美味い物いっぱい食わせてもらって来い」と彼女の肩を叩いて自分のデスクへ戻っていった。
俺が声をかければナマエは急いで書類を片付け、オロオロしながらこちらを見上げている。
オフィスを出て、後ろにナマエがついて来ているのを確認すると、エレベータまでの廊下を進んでいった。

「あの、ウェスカーさん……」
「ナマエは何が食べたい?」

到着したエレベータに乗り込みながらそう問えば、彼女はさらに恐縮して「何でも喜んでいただきます!」と言う。
普段、マイペースな部下ばかり相手にしているからか、彼女との会話は実に新鮮である。
落ち着いて話もしたいから個室の店がいいだろう。
敬礼する警備員に律儀に会釈を返すナマエを後ろに、俺たちは建物から外へ出た。

「移動はヘリだ」
「ヘリですか!?ウェスカーさんが操縦を……?」
「冗談だ。操縦はできるけどな」
「わー!すみません!そうですよね、ヘリな訳ありませんよね……」

クリスはナマエを飲み込みが早いと言っていたが、このような間が抜けたところもあるようで思わず笑みが漏れた。
赤面のナマエを愛車の助手席に座るように誘導すれば、彼女はまた焦ったように礼を述べてぎこちなく乗り込んだ。
ハンドルを握り車を発進させると、暫く静かな時間が続く。
ナマエの視線を感じ、前を向いたままどうしたのかと話を振った。

「その、ウェスカーさんは普段どういうことをなさっているのかなあと思いまして」
「上層部との会議や任務の振り分けが日課だが、この組織ができる前はクリスたちと特殊な捜査を行っていた。懐かしいな」
「へえ……!」
「ナマエ、職場には慣れたか?」
「はい!皆さん優しくて……覚えることが多いのは大変ですが、興味をそそられることもたくさんあるので楽しいです」

朗らかに笑うナマエに可愛らしい部下だと感じ、釣られて自分まで表情が緩んだ。
この組織に所属しているのは、職業柄ほとんどが専門的な知識を持つ隊員や研究者だが、ナマエのようなウェットとドライの研究が可能でマルチな技術を持つ部下は決して多くはない。
クリスだけではなく、若手研究者の筆頭であるルイスもナマエに期待していたし、もちろん俺も例外ではなかった。
彼女を危険な地には派遣したくはないが、レオンからの射撃や体術訓練を身に付ければ、現地調査にもぜひあたってもらいたい。
少し抜けているところが魅力でもあり心配の種でもあったが、まずは彼女の才能を育て見守ることに専念しよう。


[main]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -