倉庫と小説兼用 | ナノ




置について
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どうやら私はとんでもない組織の本部に所属してしまったようだ。
良い意味で、だけれども。
多様な組織犯罪や緊急事態に対応するため、所属している隊員や職員は皆、特定分野の専門家や実務経験豊富でかつ個性的である。
所属隊員の妹と同級生だった私は、他薦によって面接を経て採用されたわけだが、正直能力に見合っていないのではないかと初日はヒヤヒヤしていた。
でも、隊長は体力面はこれから鍛えていけばいいと言ってくれたし、与えられた書類の整理や実験補助等には懸命に取り組んでいる。
組織の概要を聞いただけだと大変そうな印象をもつかもしれないが隊員や職員はいい人ばかりで、そのこともあって私はここで頑張っていこうと思えた。

「今日から我々の一員となった、ナマエだ」
「ナマエ・ミョウジです、よろしくお願いします」

支給された特注の制服に身を包み、緊張しながら自己紹介をすると、部署の皆は笑顔で迎えてくれた。
見るからに力強そうな同級生の兄に、美人な爆発物処理要員、人の良さそうな火器整備担当、スマートな印象の諜報員、そして生物工学のプロフェッショナルでいて高い身体能力を併せ持つ隊長……。
今日から私はその中で働く職員の一員をなったのだ。
しばらくは研修期間ということで、いろいろな隊員たちについて作業を教授してもらう流れになっている。
他部署の見学もさせてくれるとのことなので、これを機会にいろいろな人に顔を覚えてもらえれば良いなと思っていた。
まだ、隊長であるウェスカーさんとその秘書のエクセラさんとしかきちんと話をしたことがなかった私は彼女について所内の設備の案内を受けていた。
地下には大きな射撃場があり、地上階は下から部署のオフィス、ラボ、カフェテリアやショップ、別棟の社員寮までの渡り廊下、トレーニング室やプールにサウナという具合になっている。
建物の外には実地訓練が行えるようにフィールドが広がっており、今も所々で土煙が上っている。
私はフロアに入る度に圧倒されてしまい、妖艶な笑みを浮かべたエクセラさんに「驚いてくれたみたいで、案内のし甲斐があるわ」と声をかけられ子どもっぽい自分が恥ずかしくなった。
一通り見終わると、彼女にお茶でも飲んで休憩しようと誘われ、カフェテリアまで戻ってきた。
充実した社食に感激しながら私はココアを啜った。
エクセラさんは、何か書類に目を通しながら一心地ついた私にいくつか質問を始めた。

「研修中に体術と射撃の訓練を始めるのは、アルバートからも聞いてるわね」
「はい」
「そっちの面は全くの素人だと」
「そうです……」

考え込む素振りを見せるエクセラさんにどうなるのか不安に思っていると、彼女は小さくレオンという名を呟いた。
レオンとは、あの諜報員のことだろうか。

「誰を指導にあてようかと思ってね。仕事については順番についてもらえば構わないないんだけど」

そう言って顔写真入りの隊員証のコピーをファイルから取り出した。

「ジルの体術は初心者には難しいのよね。クリスなんて筋肉の量からして問題外じゃない?」

悠長に話すエクセラさんの言ったことがおかしくて、思わず吹き出してしまう。

「こんなゴツイ人に指導されたら身がもたないわよ」
「ふふ、そうですね」

クリスさんの言われように、悪いと思いつつ笑ってしまう。

「そうすると、レオンが適任じゃないかと思うんだけど、どうかしら」

彼女はジルさんとクリスさんの隊員証コピーを脇に避け、レオンさんのそれを私の前に差し出した。
だから先程、彼の名を呟いたのか。

「レオンさん……」
「ええ、彼なら射撃の腕もいいし、体術も基本的なことから教えてくれるはずだわ」
「それなら、ぜひお願いしたいです」

張り切ってそう返答すると、エクセラさんは「決まりね。彼には私から伝えておくから、明日から存分に鍛えてもらいなさい」と労ってくれた。
初日で疲れただろうからと、日が傾き始めると彼女は私を寮に返した。
その通りだった私にとってはとても有難かったが、その日は昨夜よりも興奮して中々眠れなかった。
研修期間中は、午前中に仕事内容を教えてもらい、昼食を挟んで午後から夕方まで訓練を行うらしい。
これから始まる新しい生活に期待と不安が混じり合っていたが、楽しい毎日になりそうだと何の根拠もなくそう思って目を閉じた。


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