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「…見る限り第一情報部の烙印が押されてはあるが…」

 ぼそり、と聞こえる納得したと思われる言葉にほっとしたイリスだったが、兵士達はこちらに聞こえぬ様に小さな声で話し始める。
 それから少しすると、何やら不穏な空気が流れてきたのを感じ、イリスは二人の言葉に耳を傾けたが、その会話までは伺うことはできなかった。
 すると深い溜息が聞こえ、兵士達はこちらに向き直ると、イリスに品定めするかのような視線を遣る。
 その表情は、まるで苦虫を潰したような顔でもあった。

「悪戯にも程がすぎると犯罪だぞ! 我らはこれを偽書と見受けた!」

 閉口一番、そう怒鳴りつけられたイリスは目を丸くせざるをえなかった。
 あの書状は確かに簡易ではあったが、情報部の重要基幹である第一情報部の烙印が確かに押してあった。
 それをこんな所で見張りをしている兵士の一存で断るようなことは出来ないはずであったのを知っていたからだった。

「大体お前らの様なクソガキに我ら崇高なシャルト兵が頭を下げるはずなどない! しかもあの軍士隊長様に用事だと? そんなことなどありえるか! 読まずとも分かる内容など見て堪るか! 下がれ下がれ!」

 受け取るかと思いきや、兵士はその書状を地面に叩きつけると怒鳴り散らす。
 中身も見ていないと言うのに、その言い分は如何なものかとイリスは心の中で罵倒するが、ここで火に油を注ぐのも避けたい。
 大人しく引き下がろうと激昂する兵士から一歩身を引くと、イリスが逃げ出すと思ったのか体格のいい兵士が掴みかかろうとする。

「おい! 逃げる気か!」

 手荒なことが出来ないイリスはそのまま素直に胸ぐらを掴まれたが、それにはエリスが黙ってなどいなかった。

「てっめえ! イリスに手ぇ出すんじゃねえ!」
「ほう、本性を表したか!」
「お前ら聞いてりゃ元々話なんて聞く気ねえだろーが! 腹立つ、ぶっ倒してやる! かかって来い!」
「こら、エリ…」

 今にも手を出しそうな、否もはや胸ぐらを掴み返しているエリスを制そうとするが、一度火が付いた彼をいや、彼らを止められない事なよく分かっている。
 この自体をどう収束させようかと頭を悩ませていたイリスが深い溜息をつくと、そんなイリスを宥める様に肩に手をそっと置かれた。

「いえ…ですが今の言葉は流石に心無いのではないでしょうか」

 鶴の一言、とでも言うのだろうか。落ち着き払ったその声に、その場に居たもの全てが思わず動きを止めた。

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