5
 流石にあの調子であると、一般の旅人からの受け取りも拒否される勢いではありそうだが、そうは言ってられない。
 クワースリ達の旅券をそのまま持ったままであれば、二人の仕事に差し支えるのだからこんな事を続けることなどは出来ないのは分かっている。
 今だって無理言って受け取ったものと変わりはない。

 それはまるで、二人の旅は来年までお預け、だと言われているようで、その表情は暗くなる。
 するとソアはこの場に似合わない笑顔を浮かべて二人の顔を交互に見ると、励ますかのように肩を軽く叩いた。

「きっと大丈夫だよ! ちょっと行ってみよ? ソアは二人の顔を交互に見て、そう笑いかける。二人は正式にシャルト軍の人に用事があるんでしょう? ならあの門番の人だって話を聞いてくれるんじゃないかな」


 どうやら、あからさまに落ち込んだ顔をしてしまっていたのだろう。
 エリスは申し訳ない気持ちもあったが、ソアの気遣いに気付かぬようにくしゃりとした笑顔で頷く。

「それもそうだな! まあ、ここで何言っててもかわらないのは事実だし、ソアの言うとおり行ってみるか!」
「そうですね、行ってみましょう」

 三人は意を決して門番所に近づいていく。
 するとエリス達の姿を見つけた門番の兵は、とても緩慢な動きで門番所から出てきた。
 兵士は体格の良い兵士と、小さな体つきをした兵士の二人。ヘルムにより顔は見ることは出来ないが、こちらを睨みつけているのがよくわかった。
 いよいよかと思い、エリスの書状を握る手に力が込められる。

「おい、そこのガキ共止まれ」

 予想通りの言葉に、三人は素直に立ち止まる。
 ここで逆らえば通る話も通らないのは、先程の御者を見ていればすぐに分かる。

「ジュナは今、シャルト軍が正式な手続きの元介入している為に部外者は一切立ち入り禁止だ」

 小さな体つきの門番はそう言い放つと、持っている槍で退くようにと示唆する。
 その扱いに思わずイリスは眉間に皺が寄ったが、息を一つつき、エリスから書状を受け取り一歩前にでると恭しく兵士達に礼をする。

「申し訳ございません。それは存じ上げませんでした。ならば、此方だけでも受け取って貰えないでしょうか」

 イリスはそう言って書状を差し出して兵士に見せるが、体格の良い兵士が首を振る。

「そんな訳の分からんもの受け取れんな、出直せ」
「そう、ですか…。それは困りました。フェテス村に居るシャルト兵の方たちから手紙を預かっているのですが、クレデルタ軍士隊長宛の物なのです。中身は分かりませんが大切な書状かと思いますが…」

 イリスが真剣に、至極困った様に言うものだから、兵士達は二人顔を見合わせると、体格の良い兵士が渋々と手を差し出し「見せてみろ」と冷たく対応をするが、イリスはそれに対し、微笑を浮かべると丁寧に受け渡した。

/
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -