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「石室が有る土地は、一般的に妖精の長達が居る場所、所謂女神達の世界メルセデスと私たちの世界、ノジェスティエを繋ぐ触媒なのは知ってるよね?」

 問いかけてくるソアに、エリスが頷くと彼女は言葉を続ける。

「ヴァッヘにとっての石室は、石室がある場所を聖域と呼ぶほど特別なの。ある文献では、光の女神に石室を守るようにと過去に伝えられているらしいよ」
「光の女神…ねえ」

 "女神"の言葉に、エリスは表情に影を落としその含んだ物言いに、ソアは思わず目を丸くする。

「…エリス?」
「いや、女神がいるんならお会いしたいなと思ってな」

 ソアが顔色を伺うようにエリスの名前を呼ぶと、すぐに何時ものような明るい表情に変わり、悪戯気に笑うが、それはどこか寂しそうにも見える。
 ソアはもちろんイリスもそれに気づいてはいたものの、二人は何も言わなかった。
 ソアはその代わりに笑顔を浮かべて、イリスとエリスの間に入り込むと、二人の腕を取って足を進める。

「あ、ねえじゃあこれは知ってた? ジュナのヴァッヘは最近じゃ、蘇生士の管理も任されたんだって」
「蘇生士はジュナに産まれる聖なるヒトの事でしたよね」
「うん、あたし一度会ってみたかったんだよね! 会えるかな?」
「馬鹿、会いにいく、の間違えだろ?」
「…うん! そうだね!」

 エリスの言葉にソアは子供の様にはしゃぎながら頷くと、するりと手を離してリズムよくステップを踏んで先に行き、くるりと振り向き首を傾げて問う。
 
「ところで二人はどうしてジュナに行く予定だったの?」

 珍しいねとの意味を込めて言うと、目線を空に向けて思い出すようにエリスが言う。

「そこに駐在してるシャルト軍に用があるんだ。俺らんとこの離村式で事故があったからその報告だ」
「なので、着いたら少し探してもよろしいですか?」

 ソアの顔色を伺うようにイリスが聞くと、ソアはにっこりと笑って頷く。

「全然いいよ! じゃあそのあとは三人で観光しようね!」
「それはいいですね。それではさくっと行っちゃいましょうか!」

 にっこりと笑うイリスは、先ほどのソアと同じくスキップするのではないかと言うぐらいに上機嫌だった。

「…イリスがピュア」

ぽつりと呟いたソアに、エリスは苦笑しながら「歴史的建造物が好きなんだ」と短く答える。

「何やってるんです? 二人ともさくさく行きますよー!」
「はーい!」

 イリスの声に、二人は思わず互いを見合わせ笑う。

 初めて見る世界は、何もかも新しく輝かしく素晴らしく見える、そうエリスは思った。

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