2
 すれ違い、瞬時に鋭い角を震わせている脳天にソアは躊躇う事もなく細いナイフを突き刺す。
 ソアはそれを軸にしてオークの背中へと飛び乗ると、腰にある剣を引き抜き、大気から妖精達を引き寄せる。

 光る粒子と地底から吹き出る黒い霧を纏ったその剣を、ソアはオークの太い角目掛けて叩くように振った。
 まさか、とは思ったが、その一撃により、オークの立派な角を易易と叩き割れ、オークは雄叫びとも聞こえる絶命を上げながら力なく倒れると、粉のような小さな粒子になり空へと消えていく。

 物体のなくなった体からソアは柔らかく着地すると、背後から拍手が聞こえた。

「お見事、ですね。」

 にっこりとした表情でイリスは言った。エリスもソアの戦いぶりに口笛を鳴らす程だった。

「どうも。ね? 足手まといにはならないでしょ?」

 ソアは息をつきにんまりと笑みを浮かべながらそう言うと、右足の太股に伸縮性のあるダガーをしまう。

「オークは角が致命傷なの。魔物の弱点を的確につく事が一番大事で、強敵でも形成逆転を狙えるんだから」
「…へえ、でもそれって初めてあった敵にはどう分かるんだ?」

 エリスが尋ねると、ソアはふふ、と困ったように笑う。

「私もアニマさんの受け売りだからなんとも言えないけど、敵をちゃんと見つめることなんだって」
「そうですね。素人目の僕から見てもソアはそれに特化しているんだと思います。だからアニマさんもそう助言したんでしょう」

 黙って聞いていたイリスが的確に指摘すると、ソアは気恥ずかしくなったのか頬を赤くそめて首を振る。
「そんなことないよ」と言うソアに、エリスが茶々を入れると、果実のように熟れた頬を膨らませる。

「と、とりあえず! ジュナはこの街道を真っ直ぐに行けば着くよ。さっきみたいに魔物が彷徨ってるから、陽が落ちる前には着かないとまずいね」

 ソアはもう一つの剣を腰に戻しながらが話を上手く逸らして先を見遣ると、あ、と声を上げた。

「ほら前を見て。ここからはもう、ジュナの敷地だね」

 ソアが指指した場所は、クラーフとジュナを結ぶ唯一の街道の端に、大きな木が対に立っており、不自然なアーチを描いていた。
 平原だと言うのに、そのせいかそれはまるで何かの入り口のようにも見える。
 それを見つめながら、ソアは声を落としてぽつりと呟く。

「…確か最近じゃ、ジュナのヴァッヘとシャルト軍で小競り合いがあるって聞いたな」
「シャルトと? 争いを嫌うヴァッヘ達にしては珍しいお話ですね」

 イリスは思わず目を丸くした。

「うん。なんでも話によると蘇生士の権利の奪い合いだって。流石に蘇生士が絡んだらそうはしてられないんじゃない?」
「ヴァッヘって風の妖精と人間のハーフの事だろ? なんでそいつらがジュナに?」

 ソアの言葉に疑問が浮かんだエリスが空かさず問うと、隣に居るイリスが口を開いた。

「おや、エリス知らないんですか? ヴァッヘは石室の番人とも呼ばれる種族です。ジュナの更に奥にはデュラムリナとメマルシーニの石室があるからに決まってるじゃありませんか」
「そ、それぐらいは常識だろ! でも、デュラムリナが闇、メマルシーニが光の加護が働く地だろ?」
「まさかエリス…ヴァッヘがその属性ごとにいるだなんて思ってませんよね?」
「なんだ…違うのかよ…」
「実は光と闇だけは例外でいないんだよね」

 ソアがイリスの言葉に付け足すと、へえ、とエリスが呟く。

/
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -