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 はあ、と大きな溜め息は、暖炉の薪が割れる音でかき消された。
 部屋にある小さな窓は、外の冷たい空気と、虚しさを運んできた。外はもう暗い、また陽が落ちたのが分かった。
 唯一ある扉は、内側からは開かず監禁状態であったが、小さい頃からこの状態が続いていたためか、少女と見間違う程の金の髪の少年、クロノウラトは気にも止めずに机に項垂れていた。
 だが、クロノウラトの表情は何処か焦燥感に囚われており、じ、と開かないドアを見つめていた。
 ばたばたと騒がしい音が聞こえると、クロノウラトの表情をより一層険しくさせ、いよいよ座ってなど居られずに立ち上がると落ち着きなく部屋の中を歩く。

 すると、あれだけ騒がしかった音が消えた。まるで、時を止めたかのようだ。

 次に、屋敷には断末魔の叫び声が響きわたる。

 貴金属の触れ合う音と、人々の力強い足音がどんどんと近くなっているのがわかり、何事かと立ち上がる。
 そして、荒々しく開かれた扉の前には、軍服を来た人間が多数居る。その中で一際目立つのが首から掛かっている金のネックレス、軍士隊長・クレデルタだった。

「さあ、この村から出ましょう、蘇生士・クロノウラト様」

 クレデルタの後ろにいる兵士が持っている金属の塊には、赤黒い液体がべっとりとついているのに気付き、何が何だか分からずに唖然としていたが、時間が立つにつれて顔は青ざめていく。

「何て…何て事をしたんだよ、クレデルタ!」
「何の事ですクロノウラト様…」

 力無く震える手でクレデルタへと掴みかかるが、平然とした声と顔。人間味の無い感情を持つクレデルタに恐怖心を覚える。

「僕を此処から出すだけの話でしょ! 村の人には危害は加えない約束じゃないか、今すぐ止めてよ! 君はそんな人なんかじゃ…」
「俺はシャルト軍のただの駒だ」

 クロノウラトの懇願も虚しく、クレデルタの静かな怒声に消え去り、煩わしそうにクロノウラトの手を凪ぎ払うと細い体を床に叩きつける。

「そしてお前も、軍の駒…。黙らなければ、その口が開かない状態にしてやってもいい。…連れていけ」

 顎でクロノウラトを指してそう言うと、兵士達はクレデルタへ敬礼し、倒れ付しているクロノウラトを荒々しく持ち上げる。
 振り払おうとするが、素早く手を後ろで縛られ、後ろで結われた長い髪を引っ張られる。

「クレデルタ…、何で…」
「俺は昔からこうだ。この村は前から消し去るつもりだった…。だが蘇生士は貴重な力、ここで消す訳にはいかない」
「僕が居なくなれば、ヴァッヘは放っときはしない! 必ず僕をつれ戻しにきてくれる!」

 軽蔑の眼差しをクレデルタへと注ぎ、奥歯を噛み締めて怒りを抑えようとする。だがそんな言葉は通用しない。

「なら、そんな邪魔な存在は、今此処で、消せばいい…」

 そう言って、クレデルタはとても綺麗に笑った。

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