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「フム…そんな貴方も大いに占いたい」
「遠慮しときます。僕、そうゆうの信じないタイプなんです。なんならエリスでどうぞ」
「おい! なんで俺を売るんだよ!」
「人がやっているのを見ているのは楽しいので。特にエリスが」
さらりと交わすイリスを見ながらマサカは口元に卑しい笑みを浮かべるが、すぐに作り笑いの仮面をかぶった。
「仲がよろしいのはいいことですネ。さて、お疲れサマですよ、お嬢サン」
「あ、ありがとうございます」
マサカの意味深な言葉に、心ここにあらずといったようなソアだったが、終わりを告げられると深く頭を下げた。
「ナニ、当たるも八卦、当たらぬも八卦…私のいま言った事は真実かはわかないサ」
肩を落とすソアを気遣ってか、マサカはそう言いながら何もないかのように露店を片付けはじめた。
ソアもそれに手を貸して、机の上のクロスを綺麗に畳むとマサカに手渡す。
「占い、ありがとうございます」
「イエ。それに、こちらこそ片付けを手伝ってくださってありがとうございマス」
露店は綺麗にまとめ上げられ、最後に持ち運び用の紐を通すと、マサカはそれを背負い、二人に目線を遣れば、まだ口論は続いていた。
二人はお互いを見合い苦笑する。
「…でも私、マサカさんの言ってること、なんだかあってると思うんですよね」
ソアは悲しげに睫毛を震わせたが、すぐにいつものように笑顔でそう言った。
マサカは驚きを隠せず目を丸くしたが、ソアの笑顔につられて微笑む。
「そう…受け止めようとする貴女は、強いネ」
「いや、強くないですよ。私、強くないのに、強がってるだけですから」
ソアは苦笑して返すと、マサカは優しく首を振って否定した。
すると、強い風が森から吹いて、その場を若葉が駆け抜けていく。
マサカはざわめく森を見つめると、ぽつりと呟く。
「…今日は騒がしい一日になるネ」
風の音が邪魔しているはずなのに、その一言だけはソアに響くように聞こえた。
「サ、皆さん周りには気を付けて」
一つ手を叩き、こちらを向いた三人にそう伝え、マサカは視線だけを動かし周りを見渡し、卑しく口角だけを上げて笑った。
「…どうしたんです?」
「ああ…なんでもありはしませんよ」
「ってゆー、顔じゃないけどな」
「おや、これは失礼」
マサカはそう言って苦笑しながら独特な挨拶を済ませると、軽やかに踵を返す。
「また、何処かでお会いしましょうネ」
マサカは肩越しにこちらを見ると、にっこりと笑いながらその言葉を残し、すぐにその場を去って行ってしまった。
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