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 ソアを向かいの小さな椅子に座らせると、マサカはソアに水晶に手を置くように指示をだす。
 するとその水晶の中がきらきらと輝きだし、傍観していた筈のイリスとエリスもほう、と息をついた。
 どうやらあの言葉は本当だったようだ。

 マサカは水晶が輝くのを見ると、手を合わせ力を込める。
 何処から出したのか分からなかったが、手の中には水晶に似た小さな玉が六つほど現れ、それを机の上に転がせた。
 その小さな玉は、水晶を中心として一人でに円をかくように回り続ける。時たま中央にある水晶にこつんと当たるが、また元に戻りぐるぐると回り、その間にも水晶の中はきらきらと輝きを増していった。
 マサカはその様子を黙視していたが、水晶の中が七色に光るのを見て驚いたように目を大きく見開き、すぐに余裕気に口角を上げた。

「やはり…とても波乱万丈な人生を送るネ…他のヒトにはできない運命を背負ってる」
「そんな大それたヒトじゃないんですけど…」

 少し緊張しているのか、肩を強張らせているソアは困ったように笑う。

「何言ってるのサ。ヒトは自分が、他人が思う以上に大きなエネルギーがある。そのエネルギーがこの世界を産み、神を創る。そしてこの世界を紡いでいくのサ」
「なんか…それって素敵…」

 ソアはマサカの言葉に目を輝かせながら、ほぼ無意識に言葉を漏らした。
 それにはマサカが微笑む。今まで作った笑みしか出さなかった彼だが、その笑みは確かに彼本来の優しい笑みだった。
 また黙視を始めたマサカだったが、輝く水晶の中に黒い靄がかかっていくのに、眉間に皺を寄せた。

「近いうちに良くないコトが起きるネ…。大切な何かを失う」
「大切な…何か…あの、それって何ですか」

 ソアの問にマサカは顔を上げると、とても真剣な眼差しを向ける。

「それは私にも分からないサ。ただそれと引き換えに貴女は大きな力を得る」
「なんだそりゃ…」
「占い師は色々なモノ、方法を使って心や未来、運勢を判断しますからね。言葉が抽象的になることもあるのでは」

 不満そうに言うエリスに、イリスは苦笑しながら補足してやった。
 そう言っているうちに占いは一通り終わってしまったのか、マサカは転がり続ける小さな水晶を手の内に戻した。

「…まあ、そうだネ。それに、僕は他の占い師と見え方が違うからサ」

 長い息をついたあと、マサカはイリスへと悪戯気に視線をやり、にやりと口角をあげる。

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