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 残された三人は途方に暮れたように顔を見合わせる。

「…何か、気に障る事でも言っちゃったかな…」

 人の感情に取り分け敏感なソアは、心配気に呟くように二人に問う。

「んな事ねえだろ。兵士も兵士だし、仕事詰まってピリピリしてるだけじゃねえの? 何か夜にあんのかな」
「あの言葉振りだとそうなんでしょうね。まあ、夜に出る用事も無いですけど、邪魔はするなとの意味でしょう。気にすることは無いんじゃありませんか?」

 目を伏せているソアに、イリスは優し気な声色で声をかけると、ソアは顔をあげて苦笑する。

「うん、そうだね。あんまり気にしなくてもいいのかも。そうだ、時間もあるし、少し観光でもしてかない?」
「ああ、それはいいですね」
「そうだな。せっかくだし回ってみようぜ」

 ソアの提案に、二人は二つ返事で返すと、意気揚々とそのままの足でまずはジュナの中央広場へと向かった。
 中央広場からは四方に道が出来ていた。一つは三人が歩いてきた検問所に向かう道で、その先に続く道はジュナに来るまでに見かけた不自然にアーチになった木が立っており、その先は大きな森へと続いている。
 そして三人から見て右手に広がる道の先には小さな丘の上に一際大きく、立派な館が立っていた。
 だがシャルトの兵士がそこに行く道を塞いでいたため、直接あれが何か確認は出来なかったが、ソア曰く蘇生士の住む館であろうと説明してくれた。
 クレデルタ達は蘇生士の住む館に向かって歩いていったのであろうと予想がつき、先ほどのこともあったため、そそくさとその場を離れた。

 残す左手の道に足を進めると、そこは小さな市場のような場所に出たが、シャルト兵が巡回しているだけで、売り子の姿も見えず閑散としており、至るところで監視の目が感じられた。

「なんだよこれ…なんだかそろそろおかしいよな…」

 何処にもいく宛がなくなってしまい、エリスは不安を声にあげた。

「そうですね…。軍士隊長はああは言ってましたけど、連れ去り事件と、それに蘇生士が何の繋がりがあるって言うんでしょうか…」
「それに…ずーっと監視されてるし、なんだか疲れちゃうね…」
「…そうだな。今日は大人しく宿に戻るか」
「賛成です」
「あたしも」

 残念な気持ちは隠しきれずに宿までの道を辿ると、ふと気付くことがあった。

「もう皆、家に帰っちまってるのか?」

 エリスはそう口にする。
 エリス達が忍んできた時にはちらほらと人の影が伺えたのだが、今では人の気配が無くなっていたのである。
 物音もせずに静まりかえるその道で、三人は不安を隠しきれずに顔を合わせるが、一つ不安を溢してしまえばキリがないのを分かっているのか、宿への道を急いだ。

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