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「なんだ貴様ら! 何故ここにいる!」

 何処かで聞いたことのあるような言葉に、三人は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
 そうしているうちにすぐに取り囲まれてしまったが、予想していた出来事である為驚く事もなく三人は軽く両手を上げ、敵意が無い事を示した。

「ここに居る軍士隊長と話がしたい。渡す物があるんだ」
「何?」

 兵士達に取り囲まれてしまい、肝心の軍士隊長の姿が見えなくなってしまったが、先に居る兵士達のどよめきに、その人物がその場に居る事が分かった。

「何だ、騒がしいぞ」
「は、失礼致しました。軍士隊長に用事だそうですが」
「俺に…?」

 軍士隊長と思しき人物との会話が聞こえ、隊員の垣根が開いていく。
 そこに居た人物の胸元には、金の金貨のネックレスが下がっていた。
 右目はその金糸により隠されてはいたものの、端正な顔付きをしており、その透き通るような蒼の瞳と視線が合い、エリスは思わず息を飲む。

「…何か用で?」

 軍士隊長は最初、驚いたような目でこちらを見ていたが、次には瞳を揺らし凛とした声で問う。

「あ…、俺はエリス。エリス・リズィリーザ」
「僕はイリス、彼女はソアです。突然お声掛けして申し訳ございませんでした。ただ、急用であると思い、直接軍士隊長殿に届けに参りました」

 軍士隊長の冷ややかな目線に蹴落とされるエリスを他所に、イリスは物怖じする気配もなくにそう言う。
 そんなイリスの声に勇気付けられたのか、エリスも気力を取り戻し、伝えねばならない事を思い出す。

「フェテス村に来たシャルト兵から預かった物があるんです」

 エリスがそう言うと「…ブログントですね」と小さく呟き、頷いた。
 イリスは兵士達の警戒が消えたのを察すると、一歩踏み出し胸のポッケに手を入れると、クワースリに渡された、今や少し汚れてしまった手紙を取り出し、丁寧に受け渡す。
 彼、とでも言うのだろうか。軍士隊長であるその人は遠目では性別を判断出来なかったが、それは近くにきても変わらずに分からないままだ。
 中性的な顔つきに、体のラインを隠すように着ている軍服が更に拍手をかけていた。
 イリスから受け取った蜜蝋で閉じた手紙の封を切ると、中に入っている手紙を少し出し、内容を読み込んだのか短い溜め息を着くが、すぐに顔を上げて声を張り上げる。


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