MEMORY
今思えば、私は目を覚ましました。
瞳を開けて、閉じて…。瞬きをしても其処は、ただただ無限に続く闇でした。そしてただただ永遠に時は過ぎてゆきました。
何も見えませんでした。何でみるのかもわかりません。ですが不思議な事に私には感情がありました。
そこはただただ無情に時間だけが過ぎて行くだけで、ただただ退屈な毎日でした。いいえ、日なんてありませんでした。
私が最初の物体だったから。
今思えば、其処はきっと闇の中の闇だったのでしょう。誰もがいた場所だったのでしょう。
ですがきっと、誰もわからなかったのでしょう。目を覚まさなかったのでしょう。
ある日私は眩い光を見ました。綺麗で眩しくて、キラキラしていてとても心地よかったのです。
私は気付きました。その温かな光を発していたのは私だった事を。私は嬉しさのあまりに歓喜の歌を歌いました。
そうです、私には口があったのです。
すると風が吹き、あまりの突風に視線がぐらりと揺れました。ですが次の瞬間には、私には不思議な安定感が在りました。
そうなのです私には足が在りました。二本の足で、私はしっかりと立っていました。
私の足元には、豊かな緑がゆらゆらと靡いていたのです。
靡かせていたのは、風とゆう者でした。
心地が良くて、私はそこの緑に倒れました。耳を澄ませれば「生きている」と言ってました。
答えた者は、土とゆう者でした。
その時にまた気づいた事がありました。私には耳があったのです。その者達の声が聞こえるのです。
その嬉しさに私は目から水を流しました。頬を伝い、その水が地面に落ちると、その場所から水が噴き出すように涌き出したのです。 すると声が聞こえました。「ありがとう」と。
その者の名前は水とゆう者でした。
私はその言葉に嬉しさを感じ、胸がほんのりと暖かくなりました。その不思議さに私は自分の胸の辺りを触ってはみたものの、直接は暖かさがわかりませんでした。
その時に分かりました。私には2つの手がありました。自分の目線より高く手を揚げてみると、ふわりと確かにその手に暖かさを感じて弾けたのです。
すると私の両側に焔がゆらりとそしてゆっくりゆっくり息をしたんです。するとふわりと心地好い風が吹きました。
「そして気づいたのです」
「私は全てだって事。この世界は記憶と心で出来ている事…、それを彼に教える事ができたのであれば、あんな事にはならなかったんです」
「全ては私と彼の思いと記憶の違いだったのです」