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 眩しい太陽の陽射しに何度目かわからない欠伸を一つ。
 客人達の部屋を覗いてみると、大きな体を丸めて二人小さなベットで寝ていた。
 きっとあともう少ししなければ、少しの事では起きないだろう。

 ソアは朝食のコーンスープを焦がさぬ様に温める。新鮮なミルクの匂いに、オーブンから香る芳ばしい知らせ。
 二人の喜ぶ顔が容易に思い浮かべる事ができ、思わず頬を緩めた。

「ソア、おはよう。今日は随分と早いわね」

 アニマはそう良いながら、籠一杯に盛り込まれた野菜を机に置くと「朝食の準備、ありがとうね」と愛嬌のある笑みを目尻の皺にたたむ。
 裏庭にある野菜畑で採ったばかりの野菜達は、朝露に輝いているのだと言うのに、ソアは浮かない顔をしていた。

「…あの、昨日は、すみません」

 鼻歌を歌うアニマの背にソアはそう声をかけると、アニマは振り返り不思議そうに小首をかしげた。

「どうして? イリスさんもエリスさんも素敵な人じゃない。良いお友達が出来てよかったわ」
「友達…?」

 戸惑いながらその言葉を復唱すると、アニマはくすぐったそうに「そうでしょう」と笑う。

「貴方があんなに楽しそうに笑う姿、初めてみたわ」
「そ、そんなこと…!」

 ソアは否定の声を上げようとするが、昨日の事を思い出せばそんな痩せ我慢の言葉は角砂糖のように解けていく。

「いや…うん…楽しい、かも」

 そう認めてしまえば、何と無く気恥ずかしくも、アニマに罪悪感をも感じてしまい、ソアはまたコーンスープをかき混ぜなおす。
 アニマはそんなソアを横目に、一つ息をつく。
 籠の中から幾つか野菜を見繕い、ソアのいるキッチンにはいると、横に並び「ねえ、ソア」と優し気に呼びかける。

「…何ですか?」
「今日彼らはジュナに向かうらしいのだけど、ソアも一緒に行ってきたらどうかしら」

 その言葉に、ソアは目を丸くして首を横に振った。

「でも私こんな身ですし、旅券っての持ってないじゃないですか。クラーフに行くのとは訳が違いますよ」

 今の言い分は実に最もなことだった。
 旅券は成人になり、村や町で正式な手順を追ってシャルト軍から送られるものである。
 記憶喪失の身であるソアには、その権利を一つも得ることはできなかった。
 だがアニマはただ小さく笑うと、手を出すようにとだけ言うだけだった。
 ソアも状況をよく理解していないようではあったが、手を出すと「…これをソアに」とアニマは冷たい金属を渡してきた。


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