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 出迎えてくれたのは、柔和な表情を浮かべた老婦人であった。

「まあ、見慣れない方達だわ。でもきっと素敵な紳士なんでしょうね」

 そう戯けながら微笑んだ。
 優しげな声に、綺麗にきらきらと輝く黄色の瞳、緩く三つ編みをされた銀の髪は、まるで鏡で自分を見ているようだとエリスは思った。

「えっと、アニマさん実は…」

 ソアは目を泳がせながら一歩前にでると、この状況の説明をしようとするが、アニマと呼ばれた老婦人は何も言わずに優しげにソアに微笑み頷くと、エリス達に視線をかえて招き入れる。


「寒いでしょう? 中に入ってからでも遅くはないわ。さ、上がって頂戴」
「…あ、お邪魔します!」
「ありがとうございます。お邪魔します」

 二人が深く頭を下げ、家の敷居を跨ぐのを一人見ていたソアは、申し訳なさそうに顔をあげる。

「アニマさん…」
「お友達なんでしょう。今日はそんな予感がしていたから、夕飯も多めに作っていたの。ソア、おかえり。今日もお疲れ様さま」
「ただいま…!」

 枯れた手でソアの頭を優しく撫でながらアニマがそう言うと、ソアは顔を綻ばせながら勢いよく抱きついた。

「アニマさんに…会いたかったです」


 深い息をつきながらソアが弱く呟くと、アニマは少し驚いた表情をしたが、少しするとまた優しげな笑顔を灯して「私もよ」とだけ言うと、そんなソアを抱きしめ返した。
 するとソアは顔を上げる。先程の声色からは伺えないほどにっこりとした笑みを浮かべる。

「夕飯、すぐにお手伝いしますね!」

 ソアはアニマにそう言うと、腕からすり抜けエリス達をキッチンの方へと案内する。
 アニマはそんなソアを見て違和感を感じたが、やはり何も言わずに、正確には言えずに口を閉じてキッチンへと向かった。


 そう広くないキッチンに体つきのいい青年が二人もいるせいか、窮屈な風にも見えるのが可笑しくアニマは笑った。

「とりあえず、荷物があると安心してご飯も食べられないわね…」

 ソアがキッチンで鍋に火をかけているのを横目に、アニマはエリス達の荷物を奥の部屋に置く様に伝え、早々とキッチンに戻ってしまった。
 二人はなんとも言えない心持ちでお互いの顔を見合う。そこには自分と同じ表情の顔があるのだから笑ってしまい、言われるがままに部屋に向かい、ドアを開けた。


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