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「それ以上近寄ったら痛い目みるから来ないで」
「はいはい、強がりは結構。その後ろに持ってるのは何だい? もしや、大切な物?」

 少女が一定の距離を保とうと後ろに下がれば、二人は同じく前に進み、男は静かに少女にナイフを突きつける。
 女も男と同様に凶器の斧を手に持ち、少女の前でちらつかせた。

「だから、貴方達に関係ないって何度も言ってるじゃない」
「だから、金目の物だせっていってんでしょ? 盗賊に逆らうなんて、キミとんだ馬鹿ね」

 盗賊と名乗った女は、荒々しい声で少女を怒鳴りつけると、呆れた行動をしているのが自分達だとは気付いていないのか、二人して溜め息をついた。

「命は助けてあげようと思ってんのに…もういいわ」

 そう言うと女は男を静止させ、自らが斧を上げる。少女もきつく女を睨みつけると体勢を低く保ち、右手を腰へと持っていく。
 女は一切の躊躇いを持たずに振り下ろした。


 だがそれは叶わぬ事となる。
 一瞬にしてその斧は、綺麗な弧を描き女の手から離れて飛んでいったからだ。

 女は一瞬の出来事に頭が回らないのか、今まで自分の手元にあった斧を呆然と見ていたが、その自体をすぐに理解した男は、エリス達の方に目を向けた。
 必然的に目線があう。逃げる事などできない。もとよりするつもりなどなかったが。

「何だ、お前ら」
「間一髪…って感じですかね?」

 エリスの隣に居たイリスが、不適ににっこりと笑いながら男に笑いかける。
 先ほどの一連の出来事はイリスによるもので、女が斧を振り下ろした時に、イリスが剣を斧目掛けて投げ付けていた。
 イリスの剣は風の妖精の紋章が刻み込まれているため、風の加護を受けやすく、投げ付けた剣は疾風に変わり、斧を弾き飛ばしたのだった。

 イリスは虚空に手をかざすと、先程投げ付けた剣が、意思があるかの様にイリスへと戻っていく。
 その行動に、盗賊達は少女に見向きもせず、イリスへと間合いを詰めてきた。
 エリスも剣を抜こうとするが、再度イリスに阻まれてしまう。
 イリスは剣の柄を握り、剣に風を纏わりつかせ、二人組を引きつけた所で剣を力強く切り払った。

 次に起きたのはその風が剣から解き放たれ、その突風にどうすることも出来ずに飛ばされた盗賊が空中にいた。

 盗賊はくるりと体を反らせて受身を取り、地面に足をつくと不審にイリスを見る。まさかここまで出来るとは思ってもみなかったのだろう。
 その身のこなしに、エリスはこの盗賊達が、ただ者ではないと言う事が分かった。

「…あんたこの子の仲間?」
「仲間ではないですけど、見たところ一方的に襲われていたので助太刀って所ですかね」

 イリスは剣を鞘に入れるとおもむろに少女へと足を向ける。


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