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場所は北メマルシーニ平原、目の前には大きな十字を模したモニュメントが、二人の前に佇んでいる。
文献でしか見たことがなかった二人だが、これがなんなのかはすぐにわかった。
「…これが記憶の柱〈メルモニー〉…」
クワースリが言っていた様に、フェテス村から西に歩を進め約二日。
そこには記憶の柱があり、二人は思わず見とれてしまった。
記憶の柱は、ノジェスティエが光の女神の加護を受け入れやすいようにと作られたいわば触媒のようなものだ。
又、同じくして光の女神を讃える物として、大昔の人が立てたものだと言われている。
現に、このモニュメントが建造された時は、光の女神が降臨したと記された報告書もあるようだ。
「凄い…凄いです!」
そしてイリスは、と言うと、文献で見た記憶の柱を間近で見られて興奮しきっているようで、嬉しそうに目を輝かせながら記憶の柱へと小走りに近づいて行った。
「…イリスってばこうゆう時はピュアなんだけどなー」
ぽつりとエリスが呟く。
あの天下の腹黒兄様は、こう言った物には昔から目がない。
まるで子供のようなイリスを久々に見てしまい、笑ってしまう。
イリスは手をあげてエリスを呼び、エリスは苦笑を交えながら歩を進めると、遠くから女性の叫ぶ声が確かに聞こえ、その足を止めた。
「エリス! 聞こえましたか?」
イリスもあの声を聞いたのか、目を丸くして此方へと向かってきた。
「き、聞こえた! あっちだ!」
声の方を指差すと、イリスと自然と視線が合って頷き、声の方へと走る。
エリス達よりも背丈の高い草の先で、そこを掻き分けて入って行くと、開けた場所に出る。
そして目の前には、黒髪の少女が栗色の髪色をした女と男に凶器を突きつけられ迫られていた。
女は肩までの髪で肩と腹部が見える白いシャツに、黄色のふんわりした短いパンツに茶色の長いブーツ。
男は灰色の襟付きのシャツに黄色ジャケット。黒のズボンに左足には包帯が巻かれてあり、なんとも胡散臭い格好である。
見るからに盗賊か何かとはわかる。
だが少女は凶器を突きつけられている状況下の中で、命乞いをするわけもなく、二人を厳しい顔で見つめ対峙していた。
エリスが助けに走り出そうとするが、イリスはそれを止めると人差し指を立てて静かにするように告げると、少女の漏らした言葉が聞こえる。
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