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 ソアは急いで洗面所で顔を洗ってくると席に座る。アニマも一緒に席につき、朝食を食べ始めた。

「…ソアが居てくれて本当に感謝しているわ」

 ぽつり、と呟くようにラフナが言った。その言葉にソアは顔をあげて首を横に振り、口を開く。

「感謝なんてあたしの方です。記憶喪失のあたしを助けて下さって、それに名前も頂いて。アニマさんには本当に本当ーに! 感謝ばかりなんですから」
「まあ、そんなに? ありがとう、ソア。でもね、あなたはもう、私の娘みたいなものよ。今日も気をつけてね…」

 アニマがそう優しい笑みを浮かべてソアの髪を優しく撫でながらそういう。
 ソアはアニマの笑った顔が好きだった。黄色のキラキラする瞳がどこか懐かしく、そしてアニマの笑う顔は、ソアの心をとても暖かくする。
 ソアはくすぐったそうに笑った。

「もう、なんなんです? いきなり…」
「何もないわ。ただ、なんとなく」
「ふうん…あ、そういえばクラーフって最近小さい子が行方不明って聞きましたよ」

 少し気恥ずかしくなり、話題を変えようと声をあげてアニマに言うと、アニマは口元に手を当て、困ったような表情をする。

「まあ、それは大変ねえ」
「最近は怖いね。それじゃあ…もう行こうかな」

 食べ終えてしまった食器を、ソアはアニマの分も片付け、シンクに持っていき素早く汚れを落としていく。

「悪いわね…」
「もー、だから大丈夫ですってば!」

 隣で申し訳なさそうな表情をするアニマを座らせると、ソアは食器を洗い終え、濡れた手をふきんで拭き取り、壁に掛けてある配達用のコートを羽織った。
 白と桃色が主体の、清潔感を感じさせるコートだ。

「じゃあ…あたしもう行きますね!」

 長い髪を手慣れた手つきで二つに分け、高い位置に団子に結う。
 ソアは籠を取り、玄関に置いてある短剣を二本取り、一つを太腿に、もう一つを腰に差す。
 ソアがブーツに履きかえるていると、ラフナは席から立ち上がりソアにそうだ、と話しかける。

「最近は盗賊がいるって話聞いたわ。十分気をつけてね?」
「はいっ! じゃあ行ってきまーす!」

 心配そうなアニマと裏腹に、にっこりとアニマに笑いかけるソア。
 その笑顔に何も言えなくなり、アニマは苦笑する。

 ドアを開けるソアに、外の光が差し込み、アニマは目を細め、愛しい娘の姿を目に焼き付けるようにして見た。

「いってらしゃい、ソア」


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