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 すると青年はいかにも楽しそうな声色で言葉を返す。
 だが目は笑わず、ただ口角を上げて。

「この時を待っていたさ…」
「あら、貴方も痺れを切らしていたのね」

 びっくりね、と言ったものの、女性の声も表情も一つも変わりはしなかった。
 青年は女性を嘲け笑うかのように笑い言った。

「当たり前だろ? 千年の時がたったんだ」
「そうね、きっと昔の仲間と会うのでしょうね…」
「馬鹿、惹き合うんだよ」

 青年はそう言うと、無機質な小部屋の天井を仰ぎ見て、少し悲しそうな目を女性に向ける。
 すると女性はその瞳を見つめ、小首を傾げながら問う。

「…その中に貴方はいるのかしら?」
「俺を呼ぶ奴が居るとでも思うか? 俺の事殺したいと思ってる奴は居るだろうが、そんなやつ…いない」
「それもそうね、…光の裏切り者さん」

 口元だけで笑ってみると青年は確かにな、と呟き視線を落とし、少し沈黙が流れたが、女性はそうそう、と口を開く。

「そう言えば息子が言ってたわ、ランフェスやクレデルタって人の事。その人も昔の人なんでしょう?」

 女性が尋ねると、青年は苦虫を潰した様な表情でため息ん吐いた。

「あいつ等は予想外に記憶を思い出すのが早すぎる…、何か裏がある。お前も、せいぜい気をつけろよ」
「珍しい。心配してくれてるの?」

 目を見開き口を抑えると、青年は目を細めため息混じりに言う。

「お前がいなくなったら力使えなくなるからだよ。また契約は面倒だ」
「そうだと思った」
「なら初めから言うな。…あいつ等は昔から賢いからな。一番の脅威になるだろうな…」

 と一息つき、また考えこむ。
 そんな青年を見ながら、彼女は声をかける。

「でも、ミズチ。退屈な時間もなくなる。待っていた時が来るわ」
「…嗚呼、そうだな」

 ミズチと呼ばれた青年はそう言うと、ソファーから立ち上がり背伸びをした。
 指を鳴らし、ミズチは彼女を見て心底嬉しそうに笑いかけ、拳を固く握りしめる。

「復讐はまだ終わってないんだ、これからだよ。なあ?」

 彼女は笑う。
 まるで聖女のように。
 この世界の女神のように。

 そして彼は言う。

 レイン・ミズチラン、と。


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