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「過大評価だよ。…まあ、言い訳にはなるが人数が多過ぎたかな」

 クワースリは恥ずかしそうに笑いながらそう言うと、隣のシャーリーを見上げる。
 案の定、と言った所だったのだろうか、シャーリーは今にも泣きそうな顔でクワースリを見ており、その場に腰を落とした。

「お兄ちゃんのバカ…全然笑えないから」「ごめんよ、シャーリー。心配させて」

 クワースリは苦笑しながらそう言うと、二人にまた視線を戻す。

「だがおかしなことに、盗まれた許可証は二人の分だけなんだよ」
「それって…」
「どうゆうことですか?」

 二人の不安な声が重なり、クワースリに問うと、彼は指を組み替える。

「情報部が許可証を輸送中に野党に盗まれました。なんで話は実はかなりある」
「許可証は闇市では高く売買されてますからね」

 イリスの言葉に、クワースリは頷き、そのまま言葉を続ける。

「だが許可証がお前らの分だけ盗まれたんだ。俺の思い過ぎでなければお前らは狙われてる。いや、誰だってそう思うはずだ」
「だとしても狙われる意味がわかりません。偶然ではないんですか?」

 イリスが小首を傾げながらそう言うと、クワースリは目線を落とし、首を横に振った。

「偶然ではない…と思う。後は無事だった。許可証目的なら、全てかっさらうだろ? 普通」

 いつも飄々とし、ふざけた態度ばかり取るクワースリであるが、今回はそんな面影を一つも出さずに、暗い表情で言う。
 周りの空気も重たく、シャーリーは眉根を潜めていた。
 どうするでもなく過ぎて行く時間の中で、イリスが口を開いた。

「…だとしても、どうにかなりませんか?」
「イリスお前、話…」
「そうだ! 再発行とかってできないんですか?」

 クワースリの言葉を遮り、エリスがそう言うと、今まで黙っていたアーガテイが声を上げて笑った。
 重い雰囲気が漂う中でのアーガテイの笑い声に、驚きを隠せず彼女を見ると、とても優しい笑みを浮かべていた。

「何言っても無駄っていったじゃん、クワースリ。まあそこで提案なんだよね」

 アーガテイはクワースリを横目で見ると、肘で突いた。彼もそれに観念したかの様に大きな息をつき、小さな封筒を机の上に置いた。

「これを記憶の柱〈メルモニー〉の先、ジュナに居るシャルト兵に渡してきてほしい」
「これは?」

 その封筒には、王都の烙印が押されてあり、イリスがそれを手に取り裏を見る。
 隣にいたエリスもそれを覗きこむと、クレデルタ宛とだけ書いてあった。
 イリスがそのまま目線をクワースリに遣ると「緊急時の報告書だ」と短く答えた。

「でも、それには俺達に証が必要ですよ?」

 エリスが目を丸くしながら尋ねると、クワースリは苦笑した。


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