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 クワースリはそのままルミノワ棟を出た。

 すると目の前に舗装された道があり、そこは二股に別れている。
 左へ行くとシャルト軍本部に、右へ行くと王宮に繋がる道だ。
 クワースリは王宮への道に足を進め、退屈をもて余していた体を伸ばしながら太陽を浴びる。太陽は温かく心地がいい。
 徹夜続きのせいで自然と欠伸がでてしまったが、それを隠すように噛み殺した。

 裏口の扉を開くと、王宮の大広間が広がる。
 いつ見ても見慣れない景色であった。

 壁は輝くような白さ、大理石の上には赤い絨毯が。
 太く白い柱が間隔を空けて正面口から王座まで立ち並んでおり、それは人々を圧巻させる。
 柱には光を意味する紋章と、闇を意味する紋章が交互に描かれていて、側面のステンドグラスからの太陽の光は幻想的な空間をかもしだしている。

 これを見に来る見物客は、多いときでは千を切る。

 ステンドグラスに見惚れていた、クワースリであったが、周りのざわめきに気付き前を向くと、すぐにそのざわめきの存在が分かった。
 一般人も居るということも忘れ、警備兵は正面口から入ってきた人物に敬礼する。
 大きく重たい正面口は、警備兵の警備によって常に開け放たれている状態であり、太陽の光が宮殿に差し入れる。
 その陽光がその人物の金の髪を更に引き立て、またとても神聖に感じる。

 誰もがその金を見た。
 肩より少し長めの金の髪は、右目は隠すように分けられている。時々垣間見える空の様な蒼の瞳は、宝石の様にさえ思う。
 そして整った顔は、誰もが羨望の眼差しで見るだろう。

 その人物が着ている物は、紫と黒を基調としたデザインの軍服。
 それは王都の軍を指していて、首元から見える金のペンダントは軍師隊長だとわかる。
 中性的な顔立ち、そしてまるで体の線を隠すような軍服を身につけているため、性別は見た目だけでは判断できない。
 誰もそれには触れないのだから、暗黙の了解でもあるのだろうが、入隊した直後にクワースリは気にせず尋ねてみたことがある。
 案の定本人にはぐらかされ、仕事の量が増えたことは苦い思い出だ。
 圧倒的な存在感を示しているその者の名をクワースリは知っている。
 クワースリの受け持ったクラスでも人気の軍師隊長であり、軍に所属するクワースリの上官である。
 一つ息をついてその名を名前を呼んだ。

「クレデルタくん」

 敬意が一つも感じられないその呼び名に、軍師隊長のクレデルタは視線をクワースリへと向け、蒼の瞳が銀を捕えた。
 そして、少し離れているというのにも聞こえる盛大な溜め息をついて何とも嫌そうな顔をした。
 だがこれはいつもの事だ、挨拶と一緒の感覚であり、クワースリは臆せず笑顔を浮かべた。



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