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「ま、詳しい話はクワースリに会いに行けば分かるんじゃない?」

 アーガテイは、悪戯気に笑いながらそう言うと、後ろで手を組んだ。
 イリスはアーガテイに向き直り、「なるほど」と言葉を漏らす。

「だからアーガテイがいらっしゃったんですね」
「そっか、クワースリさんの側近なのに、一緒に居ないなんて可笑しいよな」

 素朴な疑問にも漸く合点がついた。
 アーガテイと会った時にすぐに「おかえり」の言葉が出なかったのもその為だ。

 アーガテイは、クワースリの家、基ブログント家に小さな頃に養子に迎えられ、今はシャーリーとクワースリと同様に、ブログント家の家族として暮らしている。

 そして今は王都・シャルトの軍に勤め、クワースリのバディなのだ。
 基本的に、シャルト軍に勤めるにあたり、情報部と戦闘部でのバディを組むことになる。その為任務以外で離れる事は少ない。
 情報部に属するものが有益な情報を集め、効率よく迅速に戦闘部に属するものが仕事を行える様にだ。

 一見見た目はまだ幼い少女だが、アーガテイは超越した運動能力を持っている。
 武器を持たなければ、イリスとエリスでは全く刃がたたないであろう程であるし、妖精の力については完璧に使いこなしていのだ。


 エリスは一つ欠伸をして体を伸ばすと、首を鳴らしながら来た道を戻る。

「…んじゃ、呼ばれてるんなら早く行こうぜ」
「あら、なんだかお疲れの様子ね?」

 笑いながら言うシャーリーに、エリスは深い溜め息を吐いて細目で彼女を見る。

「朝から村ん中で魔物に会うと思わないだろ?」
「そうですね」

 エリスの言葉に、イリスも苦笑しながら頷く。

「さて、皆さんお疲れ様ですが、愛しのクワースリさんに会いに行きましょうかね!」

 さらりと何事も無いように話を元に戻すイリスに、シャーリーは思わず笑う。

「愛し、だなんて、お兄ちゃんが聞いたら泣いて喜ぶわ」
「本当ですか? それは光栄です」

 シャーリーにそう柔らかく返し、イリスはエリスに目を向けた。
 その目が何と言っているのか予想がつき、エリスは手を一つ叩く。
 すると皆は必然とエリスへと顔を向ける。

「よし、じゃあ行きますか!」

 エリスの声掛けに、皆めいめいに返事を返すと、足の矛先は北の森方面、ブログント家に居るクワースリへと向け、昔と変わらぬ同じ歩幅で歩き出した。


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