17

 中央広場に着くと、アーガテイの姿がすぐに目に入った。
 エリスの隣に居たシャーリーは、大きな安堵の息を吐くと、アーガテイの名前を呼んだ。

 アーガテイは振り返り、エリス達の姿を見ると、アーガテイも安堵の息を吐き、手に持っていたトンファーを戻し、ゆっくりとこちらまでやってきた。

「良かった。皆無事だったんだね」
「当たり前、だろ?」

 エリスがそう言うと、アーガテイは「そうだね」と苦笑した。

「アーガテイ、村の人たちはどうしたんです?」

 イリスは周囲を見渡しながらそう尋ねる。
 エリスもその言葉に周りを見渡すが人影すら見えなかった。
 アーガテイは、ああ、と言葉を濁し、そして続ける。

「一時帰宅させたよ。流石に…」

 溜め息を吐き、フェテス村の高い塀を見ると「闇の加護がこんなところまでくるなんて…」と、小さく零していた。
 シャーリーは小首を傾げてエリスとイリスを見るも、二人もこの言葉の意味には理解出来なかったようで、肩を竦める。
 そしてエリスは何か思いついたようで、声を上げた。

「おい、じゃあ離村式はどうすんだよ!」

 アーガテイは目を丸くし、「あ、そうだった」と手を叩いた。
 エリスにとっては、「そうだった」ではすまない。
 エリスはすぐにイリスに目線を送ると「どうなるんですかね」と呑気に呟いた。

 そんな中、一人口をつぐんでいたシャーリーが「そうだ」と声をあげ、言葉を紡ぐ。

「私はよく分からないんだけど、それだったらお兄ちゃんに聞いてみたらどうかな?」
「クワースリさんにって…事だよな?」

 エリスも大分落ち着いたのか、腕を組んで重心を片足にかけながら尋ねると、シャーリーは頷く。

「そう。昨日の夜急遽帰ってきたの。お兄ちゃんならきっとどうにかしてくれるわね、アーガテイ!」
「うーん、難しいかもしれないけど、可能性はあると思うな」
「ね! きっと大丈夫。…あ、そうだ。二人共呼ばれてるみたいよ? 心当たりなんてある?」

 手を口元にあて考えながら、更に不安気な顔付きで問い返す。
 だが二人にも別段思い当たる節がなかった。というよりも、シャーリーの兄であるクワースリは、王国に勤める軍人である為に、このフェテス村に帰ってくることも数える程だったからだ。
 最近会ったと言えど、もう半年も前の事になる。

「いえ、特にはありませんが…」

 イリスがそう答えると、シャーリーも「そうだよね」と苦笑を交え頷く。


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