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 そしてイリスはそのままシャーリーに向き直ると、申し訳なさそうに声をかける。

「心配をおかけしてすみませんでした、シャーリー。実は離村式には事前に出席の申請をしてたんですよ」
「…あ、そうだったんだ。そっか、イリスだもん、それぐらいしてて当たり前よね」

 イリスの説明に納得がいったようで、いつものように朗らかに笑うシャーリーだが、その隣で静かに話を聞いていたエリスは顔をしかめた。

「…それ、どうゆうことだ?」

 アーガテイは驚きの声をあげる。

「エリス知らなかったの? 離村式は通常、第二の鐘が鳴る前に出席場での手続きが必要なの。でもその前にも手続きをすることが出来るんだよ。申請とかあって、かなり面倒なんだけどね」

 アーガテイはそう説明するが、エリスは未だ顔をしかめたままイリスを見た。
 イリスは笑みを崩さぬまま「どうしました?」と小首を傾げた。

「…どうしたもこうしたも、俺にはそんな説明…」
「だってエリス僕任せだったんですもん。そのあと何にも聞いてこないし。ちょっとびっくりさせたいじゃないですか」
「…お前な! いつも言ってるけど俺で遊ぶな! こっちは心臓止まるかと思ったんだぞ!」
「だったら朝は一人で起きられるようにしてくださいね?」

 最後には取って付けた様な優しげな言葉と笑顔でそう言うと、今度はエリス肩を二度叩く。
 これは怒るエリスを鎮める時にイリスがするのだ。全てが一枚上手。
 何か一つでも言い返そうとするが、最もなことを言うイリスに、エリスはやはり何も言えず口を閉じた。
 するとイリスは、そんなエリスの肩を持つと有無を言わさず前を向かせる。

「ほら皆さんも前を見て」

 エリスは何事かと思ったが、イリスの言うとおりに前を向くと、思わぬ景色に絶句した。

 そこには鋭く大きな嘴を持つ鳥に似た魔物と、大きく鋭利な牙が伸びきった狼達が、群れを成して藪から出てきていたのだ。

「…魔物!」

 悲鳴にも似た声で、シャーリーは声をあげ、近くにいたイリスの服の裾を掴んだ。
 恐怖のあまり動けずにいたシャーリーの手を、イリスは驚かせないように優しく取ると背で庇い、魔物達を睨み付ける。

「どうして今こんなところにいるんでしょうか」
「花芽吹く季節、闇の力咲き誇らん。闇の妖精の定義じゃないかな? 若干早い気もするけど」

 アーガテイは顔色一つ変えず、ジャケットの中から自身の武器であるトンファーを手に取るとそう答えた。


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