それから約1ヶ月。
一磨さんの舞台の仕事が無事に幕を閉じた頃。
「Waveとのコラボ企画の打診があったんだが……」
という山田さんからの突然の呼び出しから2週間。
わたしはWaveとユニットを組むことになり、それに合わせてのトレーニングを積んでいた。
「ドラマの撮影と並行してだが、大丈夫か?無理な時は早めに言え。調整するから」
「はい、ありがとうございます」
ドラマの撮影現場からWaveとの練習スタジオをへと移動する車内。
山田さんはそう言ってわたしの顔をチラリと見やった。
(確かに今までにないハードスケジュールだけど……Waveのみんなはもっとたくさんの仕事をこなしているんだし……)
「まあ、引き受けた以上、全力で頑張れ。俺も全力でサポートする」
スタジオに着くと、車を降りる間際、そう言って山田さんはフッと笑みを浮かべた。
「今回のユニットだけど、Waveのみんなと詩季ちゃん、一人ずつが作曲した全6曲をアルバムにして発表しようと思う」
ミーティングルームに集まったみんなに、プロデューサーさんから告げられたのは、そんな言葉だった。
「えっ、マジで!?」
「初っぱなからアルバムってテンション上がるね〜」
「へぇ……なかなかやる気みたいだね」
一番に叫んだ翔くんに続いて、亮太くんと京介くんがニッコリと笑いながら口を挟む。
「……作詞か……」
「おい、お前ら……話を聞けよ」
3人とは対照的に、無表情のままボソリとつぶやいたのは、義人くん。
そして、そんな相変わらず個性豊かなみんなをまとめるのは……一磨さんだ。
(……作詞、か……)
義人くんではないが、わたしも作詞という言葉に、少しの不安を覚えていた。
「詩季ちゃんは初めてだったよね?作詞するの」
「は、はい……」
「大丈夫だよ、そんなに固まらなくても。僕もフォローするし、翔くんや一磨くんは何度か作詞の経験があるから、二人に聞いてもいいし」
プロデューサーさんの言葉に、一磨さんが優しく微笑む。
「俺たちで良ければ、少しくらいはアドバイスできると思うよ」
「ありがとう……ございます」
一磨さんの穏やかなまなざしに、つい、いつもの口調に戻ってしまいそうになり、慌てて仕事モードに切り替えた。