【恋人は御曹司】


「おい!」

構内を歩いていると、聞き慣れた声が後ろから飛んできた。

「これから味噌ラーメン食いに行くから、お前も来い!」

「えっ!?」

返事をする間もなく、晶は私の腕をつかんで、グイグイ引っ張っていく。

(もう、仕方ないなあ…

でも、こうやって私のことを当たり前に仲間に入れてくれる、

晶の優しさなんだよね…)

「おい、ボケッとしてんじゃねーよ!早く歩けっ」

晶の背中を見ながら思わず微笑んでいると、晶が振り返ってそう言った。

(うっ…前言撤回かも…?)

「ねえ、晶。味噌ラーメンってもしかして…」

「あ?味噌ラーメンって言ったら札幌に決まってんだろ?」

「やっぱり…ジェット機で行くんだ…」

「ああ、もうあいつら待ってんだぜ。早くしねーと日が暮れちまう」

そうして晶に連れられて、私は北の大地へラーメンを食べるためだけに旅立つのだった。