「…ほう、未来っちゅうんは、まっことすごい世界じゃのう!」
何枚かの紙を見交わして、瞳をキラキラと輝かせながら、龍馬さんはひと言そう叫んだ。
龍馬さんの手に握られた紙。
そこには、わたしの時代のものがいくつか描かれている。
もちろん、それを描いたのはわたしだ。
電話や車、テレビにパソコン、ファッションまで。
拙いわたしの絵に食い入るように見入って、わたしに尋ねてくる龍馬さんの姿が、なんだか可愛くて。
それと同時に、ここに描かれた未来を作るために、今、龍馬さんたちが頑張ってくれていることを改めて感じる。
わたしがここにいられるのも、龍馬さんたちのおかげなんだって。
「紡は、ここにある未来で、幸せに暮らしていたんかのう…」
「え…?」
「…帰りたいがか?」
不意につぶやかれた低い声に、物思いにふけっていたわたしは顔を上げる。
切なそうな、寂しそうな龍馬さんの瞳。
それが真っ直ぐにわたしに向けられていて。
「…わたしは、未来でも幸せだったけれど…今、ここに、龍馬さんの隣に居られる方が、幸せです」
そう。
その気持ちに嘘なんてない。
わたしはここにいて、龍馬さんたちの夢を、見守りたい。
「…のう、紡」
「何ですか?」
フッと優しく笑みを浮かべて、龍馬さんは開かれた障子の向こうに広がる空に目を向ける。
「もしも来世っちゅうもんがあるならば、未来の、おまんの時代に生まれ落ちて、おまんと一緒に未来を歩きたい…」
「…はい」
「わしらの夢見る未来を、おまんと歩いて…また一緒になりたい、思っちゅう」
「え…」
あまりにも穏やかな流れでそう言った龍馬さんの言葉に、一瞬、思考が止まる。
見上げた龍馬さんの頬は、赤く染まっていて。
すっと視線を空からわたしへと戻すと、照れくさそうに微笑んで、こう言った。
「じゃから、未来の予行演習をせねばならん。紡、わしと一緒になってはくれんか?」
「…はい!」
――End.