「……紡」
「……ん……る、い……さん?」
わたしの髪を優しく撫でてくれる温かい手の感触に、わたしの意識はゆるやかに浮上する。
かすれた声が自分の口からこぼれるのに合わせて、わたしはうっすらと目を開けた。
「……クリスマスは無理だが……来週、予定空けておけ」
「う……ん……?」
まだ半分、まどろみの中に身をゆだねるわたしを泪さんは穏やかな笑みを浮かべて見つめている。
カーテンのわずかな隙間から洩れてくる月明かりが、彼の露になった肌を照らす。
「紡」
「泪さん……」
ようやくハッキリとしてきた意識と、目の前に迫る彼の顔に、わたしはハッとして布団をたぐり寄せた。
「何だ。恥ずかしがっているのか?……今さら?」
クスリと笑ったその顔が、悪魔のような微笑みを浮かべていて、わたしはドキリとする。
(う……嫌な予感がする……)
無意識に後退りしたわたしを、白い壁が遮った。
「お前、俺があれで満足したと思っているのか」
「えっ?」
ズイッと近づいた端正な顔。
思わず見とれていると、彼の指先が身にまとっている布団の端をつまんだ。
「あ、あの……泪、さ……んっ」
わたしの小さな抗議など元から受け付けないとでも言うように、彼の唇がわたしの唇を奪う。
深く重ねられた唇から、甘い吐息が漏れて、わたしの耳を、脳を、身体を痺れさせていく。
(泪さん……)
彼が与える熱にうかされたように、わたしの身体からは力が抜け落ちる。
「あ……」
そしてゆるんだわたしの手の中から、布団がスルリと引き抜かれた。
ゆっくりと肌を移動していく熱に、思考が奪われ、呼吸が奪われていく。
激しいのに、甘い。
そして優しい。
わたしは全身に感じる熱を受け止めながら、少し早いサンタクロースの贈り物に思いを馳せるのだった。