ふわりと微笑む潤さんに、私も自然と微笑みで答える。
言葉がなくても、それだけで十分だと思う。
自分のことじゃなく、相手のことを一番に考えていたんだって…
それだけで、言葉なんて必要なかった。
やがて、そっと視線を朝露の庭園に戻した潤さんは口を開いた。
「紡のその姿、あと何回見られるだろうな」
「その姿って…着物のこと?潤さんが望むなら何回でも着るよ」
「…いや。振袖は…未婚女性しか着られないだろ?」
「えっ」
(未婚って…)
思わず声を上げた私の顔を覗き込み、優しく微笑む潤さんの瞳が太陽の光にキラキラと輝いて見える。
「最後の振袖姿も、俺のために見せてほしい」
「それって…」
「…こうしていると、お見合いみたいだな」
少し頬を赤らめた潤さんは冗談めかしてそう言い、フッと笑った。
「今がお見合いなら…」
「お見合いなら…返事は?」
「……」
「あとは、紡の返事を待つだけだよ」
(そんなのもう、とっくに決まってる)
――End.