「紡…」

ふわりと、柔らかな感触が唇に降りて。

「ん…」

ゆっくりと目を閉じると、キュッとわたしを抱きしめる腕に力が込められる。

「…ありがとう…待っててくれて…」

吐息が触れ合う距離で、わたしの目を覗き込んで、彼はそう言った。

「…大和…んっ」

わたしの言葉を飲み込むように、唇が塞がれて。

伸ばした手は無意識に、彼の首に絡みつく。

「オレ…もう止まんねぇから…」

掠れる声が鼓膜を刺激するのと同時に。

服の合間を縫って、肌を伝っていく熱い手。

「っ…あ…」

プツンと、ボタンの外れる音。

キシと、スプリングが軋む音。

「…紡」

熱い吐息が素肌に触れて、わたしの頭は真っ白になる。

衣擦れの音も、呼吸音も、深夜の静寂も。

全てがわたしを溶かしていく。

「はあっ…」

堪えていた熱い息が闇の中に溶けて、部屋の温度が少し上がった気がした。

「紡…好きだ…愛してる…ずっと…」

汗ばんだ肌が優しく重なって。

愛してるの代わりに、わたしは彼を抱きしめ返した。


―End.



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