―鴻上大和―
「やま…きゃっ…!」
答えるより先に、ぐいっと腰を引き寄せられて。
気がつくと天井を背にした大和さんが、わたしを至近距離で見下ろしていた。
「も、もうっ!起きて…」
「…もう一度言えよ」
恥ずかしさに、思わず抗議の声を上げたわたしの言葉を遮って。
低い声がそうつぶやいた。
「やま…と…さ…」
「…違う」
少しずつ縮まっていくふたりの距離。
真剣なその瞳に、わたしは動くことができずに。
「…言えよ…もう一度…紡…」
そう言って彼はわたしの両手首を掴んだ。
「…大和…ん…」
突然、唇に触れた温もり。
ゆっくりと優しく。
甘く深くなる口付けに、身体から力がすっと抜け落ちて。
「…紡…」
「…愛してる…大和…」
「…愛してる…ずっと…」
カーテンの隙間から差し込む朝の光の中。
あなたの温もりと、あなたの匂いに包まれて。
ふたりの朝は、ここから始まっていく。
――End.