―砂原智也―
「……お姫様のキスで、目が覚めた……かな」
フッと優しく目元を緩める、その微笑みが好きで。
ほんの少し、掠れた声で呼んでくれる、わたしの名前と。
ギュッと腰を抱き寄せる、力強い腕の感触と。
触れ合う肌から伝わる温もりと。
「紡……もう一度……して」
「……え?」
「おはようの、キス」
目の前にある彼の瞳がかすかに揺れる。
やわらかく微笑みを浮かべたまま、反対の手が伸びてきて、わたしの頬に添えられた。
「昨夜は……あんなにも……」
クスッと笑ってそう言った彼の言葉に、昨夜のことを思い出して。
身体中を熱が一気に駆け抜ける。
「赤くなって……可愛いね、紡は」
「さ、砂原さ……んっ!」
口をついて出た言葉は、彼の唇に攫われた。
「んん……」
次第に深くなる口づけ。
彼はわたしの身体をシーツに下ろすと、組み敷くように体勢を入れ替えて。
「紡……呼んで……俺の名前……」
唇を触れ合わせたまま、吐息がわたしの耳をくすぐって。
「あ……智也……さ……」
濡れた唇を、彼の人差し指がスッと撫で。
そのまま、首筋を伝い、鎖骨から胸元へと降りていく。
「っ……あ」
「紡……俺のことだけを考えて……感じて」
彼に触れられる度に、身体が熱くなる。
もう何も考えられないくらいに。
あなたを感じて、触れ合って。
溢れそうなこの想いを。
「……愛しているよ……」
そして同じ朝を、永久に。
あなたと。
――End.