「昴さ…」

彼の名前を呼ぼうとしたその声は、やわらかな感触に阻まれ。

熱い吐息が首筋から胸元へと降りていく。

シーツの波を縫って、彼の手がわたしの温もりを探って。

「…あ…」

知らずこぼれたため息が、闇に飲まれていく。

素直じゃないあなただから。

今日はわたしから甘えてあげる。

「紡…」

お互いの熱が少しずつ高まって。

絡み合う吐息がゆっくりとわたしの思考を溶かしていった。


かすかに夜明けの気配を感じて、ふっと目を覚ます。

目の前にあるのは、昴さんの整った寝顔。

腰に回された腕の温もりに心地よさを感じながら、わたしはそっと頬に手を伸ばした。

「わたしじゃ…頼りにならないと思うけど…」

そうつぶやいて、彼の厚い胸に顔を埋めると。

規則正しいやわらかな鼓動が聞こえてくる。

そのままわたしは、背中に回した腕でギュッと彼のことを抱きしめ返した。

「わたしも、昴さんのこと…守るから…」

トクン、トクン。

耳に優しく響いてくるその音に、ゆっくりとまぶたが下りていく。

再び薄れていく意識の中で、彼の囁きが聞こえた気がした。

「…十分、守られてるよ、俺は…紡。愛してる…」


――End.



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